グリム童話

【原作全文】グリム童話「白雪姫」 初稿・初版・第2版・第7版【全セリフ】

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この記事は、グリム童話の『白雪姫』の初稿・初版・第2版・第7版(決定版)の4つのバージョンを掲載します。グリム兄弟は、版が変わるたびに微妙に改訂していったので、版によって内容が変わっています。この記事では、その変化に注目していきます。

第3版から第6版をあつかわないのは、大きな変化がないからです。大きな変化があるのは初版前後に集中しているので、そのへんを詳しく見ていきたいと思います。

この記事の構成についてです。
『白雪姫』の本文テキスト全体を「37」のセクションに分割して、冒頭から見ていきます。そして、一つのセクションを初稿・初版・第2版・第7版とそれぞれ順番に見ていきますので、4つの版がまとまった形で、ドンッ、ドンッと4つ置いているわけではないのでご了承下さい。

参考:Schneewittchen

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  1. グリム童話『白雪姫』の初稿・初版・第2版・第7版(マリーの語り部分)
    1. 1:雪の中に血が三滴
    2. 2:雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒く
    3. 3:魔法の鏡
    4. 4:鏡「白雪姫が千倍美しい」
    5. 5:女王、狩人へ殺害指令
    6. 6:白雪姫と狩人
    7. 7:狩人の嘘
    8. 8:ひとり森の小家まで
    9. 9:小屋の中へ
    10. 10:小人の部屋で眠るまで
    11. 11:七人の小人、帰宅
    12. 12:七つの明かりと眠る白雪姫
    13. 13:翌朝の初対面
    14. 14:小人、家庭の仕事を言いつける
    15. 15:魔法の鏡に問いかける
    16. 16:女王、怒り再燃
    17. 17:女王の訪問① 物売りに変装
    18. 18:1度目の死 ひも
    19. 19:小人による1度目の蘇生 ひも
    20. 20:魔法の鏡に確認 ひも
    21. 21:女王の訪問② お婆さんに変装
    22. 22:2度目の死 くし
    23. 23:小人による2度目の蘇生 くし
    24. 24:魔法の鏡に確認 くし
    25. 25:毒リンゴ製造 女王の訪問③ 百姓女に変装
    26. 26:3度目の死 リンゴ
    27. 27:鏡「女王様、あなたが一番美しい」
    28. 28:七人の小人、帰宅
    29. 29:ガラスの棺
  2. グリム童話『白雪姫』結末部分(ここから3人の異なる話し手)
    1. 初稿は、あまりに特殊なので最後まで
    2. 30:白雪姫の長い眠り
    3. 31:王子様の登場と、棺をゆずる小人たち
    4. 32:王子様と棺
    5. 33:偶然の蘇生 リンゴ
    6. 34:王子様のプロポーズ
    7. 35:魔法の鏡に確認 リンゴ
    8. 36:女王の不安
    9. 37:女王への刑罰 《終わり》
  3. まとめ:グリム童話『白雪姫』初稿・初版・第2版・第7版のそれぞれの特徴

グリム童話『白雪姫』の初稿・初版・第2版・第7版(マリーの語り部分)

話し手:マリー・ハッセンプフルーク
聞き手:ヤコープ・グリム(グリム兄)

出版年とグリム兄弟の年齢

出版年兄ヤーコプ
・グリム
弟ウィルヘルム
・グリム
初稿(エーレンベルク稿)1810年※25歳24歳
初版1812年、1815年
(時期を分けて出版されます)
27歳26歳
第2版1819年34歳33歳
第7版
(決定版)
1857年73歳72歳

年齢については、正確な出版日がわからなかったので、多少前後すると思います。単に、出版年から誕生年を引いただけになってます。いちおう、目安として掲載しておきます。

エーレンベルグ稿(初稿)
エーレンベルグ稿とは、1810年に童話収集の先輩であるブレンターノに送った手書きの原稿で、グリム童話初版のもとになったものです。もともとは、ブレンターノの手伝いのために収集したものですが、その後気持ちの変化があって、この原稿をもとに自分たちで出版することになります。一般的には、エーレンベルク稿と言いますが、このブログでは「初稿」で言っています。

はじまりはじまり(^O^)v
『白雪姫』は、マリー・ハッセンプフルークから聞き取った話です。その話をエーレンベルグ稿として、グリム兄弟が、世に出せる形に手直ししたのが「初版」です。それから版を重ねるたびに、少しずつ手を加えていきました。今回の記事は、この変遷を見ていきたいと思います。それでは、グリム童話の『白雪姫』の初稿・初版・第2版・第7版です。

1:雪の中に血が三滴

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初稿
むかしむかし、ある雪が降りしきる冬の日、王妃が、黒檀でできた窓辺に座って、縫い物をしていました。彼女は、子供が欲しいと思っているうち、うっかりして指に針を刺してしまい、雪の中に血が三滴したたり落ちました。

初版~第7版
むかしむかし、冬のさなか、雪が羽根のように空から降っていたとき、王妃は黒い黒檀の窓わくの付いた窓辺に座って、針仕事をしていました。そうしながら、雪を眺めていたので、指を針で刺してしまい血が三滴、雪の中に落ちました。

解説:血が美しい?

この部分は、ほとんど変化はありません。
「雪の中の三滴の血」はヨーロッパ文学ではよく出会う表現で、愛や情熱、生命力などを象徴しているといいます。日本だと、血などが出てくれば「不吉」「不気味」と受け取ってもおかしくないですが、欧州では美しさを盛り立てる要素になるようです。

2:雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒く

初稿
すると、王妃は願い事を言いました。
「この雪のように白く、この血のように赤い頬をして、この窓枠のように黒い目をした子供をさずかりますように!」
そのあと、まもなくして王妃は、雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒いとても美しい女の子を生みました。その娘は、白雪姫と名付けられました。

初版~第7版
真っ白な雪の中の赤色があまりに美しかったので、女王様は雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒い子供を授かりますようにと願いました。それから、まもなくして、王妃は雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒い女の子を生みました。その子は、白雪姫と名付けられました。

第2版以降は、初版とほとんど同じですが、
初版「黒檀のように黒い女の子を生みました」
→第2版「黒檀のように黒い髪をしていました」
このくらいの違いがあります。黒檀は、髪や瞳に例えられます。

解説:白・赤・黒

白・赤・黒の例えは二回繰り返すのですが、特定する部分を挙げてみますと、

雪のように白い血のように赤い黒檀のように黒い
初稿なし
初版なしなしなし
第2版/第7版なしなし

と微妙な違いがあります。

いずれにせよ、雪・血・窓枠の黒檀→ 白・赤・黒は、どのバージョンでも採用されています。

3:魔法の鏡

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初稿
王妃は、国中で最も美しい女性でした。しかし、白雪姫はそれより十万倍も美しかったのです。そして、女王様は鏡にたずねました。

初版
女王は、国中で最も美しい女性でした。けれども、美しさを鼻にかけた高慢な女性でした。王妃は、鏡を一つ持っており、毎朝、鏡の前に立ってたずねました。

第2版/第7版
すぐに、女王様は亡くなりました。一年たつと、王様は、新しい王妃と再婚しました。王妃は美しい方でしたが、自分の美しさにうぬぼれて自分より美しい人がいることに我慢できませんでした。王妃は、不思議な鏡をもっていました。鏡の前に立ってのぞきこみました。

解説:第2版、実の母親から継母への変更

第2版で、大きな変化がありますね。

  1. 女王様が亡くなったことと
  2. 一年経過したこと
  3. 王様が新しい王妃をもらったこと

が加筆されることで、実の母親ではなくなってしまいます。

初版が出版されたあと「実の母親では残酷ではないか」という批判が寄せられたことが変更の大きな要因になっているようです。継母の象徴的な意味については>>継母は、なぜ悪役なのか?【継母の正体】が詳しいです。「継母」はこのまま、最後の第7版まで引き継がれることになります。

4:鏡「白雪姫が千倍美しい」

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初稿
「鏡よ、壁の鏡。
この天使の国中で、一番美しいのは誰?」
と、たずねると鏡はこう答えました。
「女王様は、一番美しい。
けれども白雪姫は十万倍も美しい」

初版
「鏡よ、壁の鏡。
この国中で、一番美しいのは誰?」
すると、鏡はいつも言いました。
「女王様、あなたがこの国で一番美しい」
こうして、王妃はこの国に自分より美しい女性は誰もいないことを確認するのでした。しかし、白雪姫はすくすくと成長して7歳になると、王妃をしのぐほど美しくなりました。そこで、王妃が鏡にたずねました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国中で、一番美しいのは誰?」
すると、鏡は答えました。
「女王様、あなたはここでは一番美しい。
けれども、白雪姫はあなたより千倍も美しい」

第2版/第7版
「鏡よ、壁の鏡。
この国中で、一番美しいのは誰?」
と、鏡にたずねました。
「女王様、あなたがこの国で一番美しい」
すると、王妃は満足しました。なぜなら、この鏡は真実しか言わないことを知っていたからです。さて、白雪姫はすくすくと成長しだんだんと美しくなりました。7歳になると、その子は太陽が晴れ渡ったように美しくなり、王妃よりもずっと美しくなりました。王妃がまた鏡の前の立ってたずねました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国で一番美しいのは誰?」
すると、鏡は答えました。
「女王様、ここではあなたが一番美しい。
けれども、白雪姫はあなたより千倍も美しい」

解説:天使の国、年齢は初版から7歳に

天使の国=Engelland(エンゲルランド)とは?
まず、初稿の「天使の国」についてです。原文では「Engelland(エンゲルランド)」となっています。直訳で「天使の国」なんですが、この言葉はグリム兄弟の『ドイツ語辞典』によれば「England」の昔の表記だと書かれてあるようです(2)。つまり「イギリス」のことですね。ここは専門家の間でも意見が分かれているようです。フローチャー美和子訳『初版以前グリム・メルヘン集』では、
「鏡さん、壁の鏡さん。イギリスじゅうでいちばん美しいのは誰?」
と、なっています。「Engelland」は初稿だけで、初版以降は、単に「Land」(国)と変更されています。

最初の美しい女性
また、初稿だけは、はじめの「一番美しい女性」が白雪姫になっています。それに対し、初版以降は、女王を鏡は指名します。まだ、美しさで負けたことのない女王を初版から入れています。その効果で、その後の女王の嫉妬を際立たせるのにひと役買っているのかもしれません。

初版から白雪姫の年齢は7歳に特定される
初版から、白雪姫の年齢が7歳と特定されます。この7歳という年齢も議論のあるところで、昔話研究家の小沢俊夫さんも
「7歳と固定した女の子と女王との美しさ比べには、疑問が残ります」
と、言っています(1)。確かにふつうに考えれば7歳は若すぎますよね。

ただ、百歩ゆずってグリム兄弟に歩み寄るとすれば、実の母親がある意味「継母」に見える時期というのが7歳くらいかなと思います。「継母」の象徴的な意味は「継母」特化記事でどうぞ。また別の理由として、やはり、この話は読んでもらっても分かると思いますが、数字の「7」にこだわっていますよね。そういうのもあるのでしょう。ちなみにディズニー版は14歳という設定です。7歳というのは、最後の第7版まで変更されませんでした。

5:女王、狩人へ殺害指令

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初稿
これを聞くと、王妃はこの王国で一番美しい女でいたかったので、とても我慢できませんでした。さて、あるとき、王様が戦争に出かけて留守のあいだ、女王は白雪姫を連れて馬車に乗って、遠くて暗い森へ行くように命じました。森には、美しい赤いバラの花がたくさん咲いていました。馬車で森に到着すると、女王さまは白雪姫に向かって言いました。
「白雪姫、降りていって、あの美しいバラをとってきてちょうだい!」
白雪姫が言いつけを聞いて、馬車から降りた瞬間、馬車はこれ以上速くは走れないというくらい速く、あっという間に走り去ってしまいました。ですが、じつは、白雪姫が森の野獣たちに食べられてしまえばいいと思って、女王があらかじめ御者に命令していたのでした。

初版
女王様は鏡の返事を聞くと、嫉妬で真っ青になりました。そして、そのときから白雪姫を憎むようになりました。この子のおかげで、一番美しい女でなくなったと思うと、はらわたが煮えくり返るほどでした。女王様は、ねたみのためにいてもたってもいられなくなって、狩人を呼んで言いました。
「あの白雪姫を森の奥深い、人の行かないところへ連れていきなさい。そこで白雪姫を刺し殺し、殺した証拠に、あの娘の肺と肝臓をもってお帰り。それを塩ゆでにして食べるのだ!」

第2版/第7版
女王様は、これを聞くと驚いて、怒りと嫉妬のために青ざめました。そのときから、白雪姫を見ると、はらわたが煮えくり返るほどででした。女王様は、それほど白雪姫を憎んでいました。嫉妬心と高慢な心は、ますます大きくたって、女王様はとうとう昼も夜もじっとしていられなくなりました。女王様は、狩人を呼びつけて言いました。
「あの子を森へ連れ出しておくれ。もう二度とあの子の顔を見たくない。森の中へ行ったらあの子を殺して、証拠に肺と肝臓を持っておいで!」

第7版は、第2版とほとんど同じですが、はじめの部分の
第2版「怒りと嫉妬のために青ざめました」
→第7版「黄色くなったり、青くなったりしました」
と、変わっているくらいです。これは、ドイツ語独特の言い方のようですね(1)。金田鬼一訳の岩波文庫も、このようになっているのですが、「青ざめた」くらいの意味のようです。(1)

解説:初稿は置き去り、初版以降「狩人」の登場

初稿は、狩人はまったく出てきません。女王と白雪姫が一緒に馬車に乗って置き去りにする話になっています。初稿の話は、グリム兄弟の手が加えられていないと考えられていて、話し手のマリー話がそのまま残されているようです。マリーの時点では置き去り型だったということです。

また、狩人の微妙なキャラクターについては、こちらに>>「狩人」本質的な意味を用意しています。

6:白雪姫と狩人

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初稿には、この場面はありません。

初版
狩人は、白雪姫を連れて森へ行きました。ところが刀を抜いて刺そうとすると、白雪姫は泣きはじめ、どうか命は助けてください。わたしは森の奥へ逃げて、もう決して戻ってきませんからと一生懸命頼みました。狩人は、その女の子が大変美しいので、かわいそうに思ってこう考えました。獣たちがきっとすぐに、この女の子を食べてしまうだろう。わたしは自分で殺さなくてすむのだから、その方がありがたいことだと考えました。

第2版/第7版
狩人は、王妃の命令にしたがって、白雪姫を森の中へ連れ出しました。狩人が、シカを切る大きな刀を抜いて、白雪姫の清らかな心臓を突き刺そうとしたとき、白雪姫が泣き出してこういいました。
「お願いです。狩人さん。命だけは助けてください。わたしは、森の中へかけていって決して帰ってきませんから」
白雪姫が、あまりにも美しいので、狩人はかわいそうに思って言いました。
「それじゃ、逃げて行きなさい。かわいそうな娘よ」
おそろしい野獣が、すぐに姫を食べてしまうだろうと、狩人は思いました。それでも、自分から娘を殺さなくてすんだので、心に重くのしかかっていた石が落ちたような気がしました。

解説:全般的に初稿・初版にカギ括弧はない

第2版から、白雪姫と狩人の会話にカギ括弧がつきました。全般的に言えることですが、初稿・初版は会話をしているところにカギ括弧がついていないことが多いですね。

なお、ディズニーの狩人との微妙な違いはこちらで比較しています。
【白雪姫】狩人全セリフ&裏切り方を比較【ディズニーとグリム童話原作】

7:狩人の嘘

初稿には、この場面はありません。

初版/第2版
ちょうど、そこにイノシシの子供が走ってきたので、それを殺し、肺と肝臓を取り出し、証拠として女王へ持ち帰りました。女王様は、喜んでそれを塩ゆでにしてたいらげ、白雪姫の肺と肝臓を食べたものと思い込んでいました。

第7版
ちょうど、そこにイノシシの子供が走ってきたので、それを殺し、肺と肝臓を取り出し、証拠として王妃へ持ち帰りました。料理長が、命令を受けてそれを塩味で料理しました。悪い女は料理をたいらげ、白雪姫の肺と肝臓を食べたものと思い込んでいました。

8:ひとり森の小家まで

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初稿
さて、白雪姫は大きな森の中でひとりぼっちになってしまうと、わんわん泣きました。そして、どんどん先へ歩いていって、すっかり疲れきったころ、一件の小さな小屋にたどり着きました。この小屋には、七人の小人が住んでいたのですが、そのときにはちょうど留守にしていて、山の仕事場に出かけていました。

初版
白雪姫は、大きな森の中でまったくひとりぼっちになりました。そして、とても心細くなったので、夢中になって走りはじめ、とがった石を飛び越え、いばらを突き抜けて一日じゅう走り続けました。そして、夕日が沈みそうになった頃、とうとうある小さな小屋にたどり着きました。それは、七人の小人の小屋でした。けれども、小人たちはちょうど鉱山の仕事にでかけて留守でした。

第2版/第7版
さて、かわいそうに白雪姫は、この大きな森の中でひとりっきりになってしまいました。とても、心細く木々の葉っぱを一枚一枚ながめては、これからどうしたら助かるかしらと考えました。それから、かけだしました。とがった石を越え、いばらを越えて走りに走りました。おそろしい野獣たちが、白雪姫のわきを通り抜けていきましたが、なんの手出しもしませんでした。白雪姫は、足の続く限り走りつづけました。やがて、夕やみがせまるころ、小さな小屋があったので中に入って休もうと思いました。

微妙な修正をしています。
第2版「これからどうしたら助かるかしらと考えました。」
→第7版「これからどうしたら助かるか分かりませんでした。」

9:小屋の中へ

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初稿
白雪姫が、小屋の中に入ってみると、そこにはテーブルがひとつあり、その上にはお皿が七枚ならんでいました。そして、スプーンが七つ、フォークが七つ、ナイフが七つ、グラスが七つならんでいます。そのうえ部屋には小さなベッドが七つありました。

初版
白雪姫は、中に入っていきました。見ると、そこにあるものはなんでも小さいのですが、とてもかわいらしくて清潔でした。そこには、七つの小さな皿の乗ったテーブルがひとつありました。お皿のわきには、七つのスプーンと七つのナイフとフォークが置いてあって、七つの小さなグラスもならべてありました。そして、窓ぎわにはベッドが七つきれいにカバーをかけられて並んでいました。

第2版/第7版
その小屋にあるものは、どれもみんな小さいのですが、それはかわいらしくて上品で、言葉では言いあらわせられないほどでした。そこには、白いテーブル掛けのかかったテーブルがあって、その上には、小さなお皿が七枚ならんでいました。どのお皿にも、スプーンがついていて、そのほかにナイフとフォークがついていました。そして、グラスも七つありました。壁ぎわにはベッドが七つならんでいました。そして、雪のように白いベッドカバーがかけてありました。

解説:小人の部屋の中は?

小人の部屋のアイテム

部屋のアイテム初稿~第7版
テーブル1
7
スプーン7
フォーク7
ナイフ7
グラス7
ベッド7

カバーなどを抜きにすれば、部屋のアイテムは全部あわせると7つですね。

版が変わると、部屋も変わる
初版での変化は、まず部屋の印象が語られます。そして、ベッドにカバーがかけられたこと、ベッドが窓ぎわに置かれていることの描写が新しく入ります。

第2版からは、テーブルに白いテーブルクロスが付けられたこと、窓ぎわのベッドが壁ぎわになったことがあげられます。そして、ベッドカバーが「雪のように白い」という聞き慣れたフレーズに変更されています。

10:小人の部屋で眠るまで

初稿
白雪姫は、それぞれの皿から、野菜とパンを少しずつ食べ、それぞれグラスからも一滴ずつ飲んだあと、あまりに疲れていたので、ここで横になって眠ってしまいたくなりました。ひとつひとつベッドを試すのですが、どれも気に入らず、最後のベッドに横になったらすぐに眠り込んでしまいました。

初版
白雪姫は、おなかがペコペコでのども渇いていたので、ひとつひとつの皿から野菜とパンを少しずつ食べ、それぞれのグラスから一滴ずつワインを飲みました。そして、とても疲れていたので、横になって寝ようと思いました。七つのベッドをつぎつぎに試してみましたが、どれもうまく合いません。最後の七つ目のだけがちょうどいい大きさでした。それで、そのベッドに横になって眠り込みました。

第2版/第7版
白雪姫は、おなかがすいてのどが渇いていたので、どのお皿からも野菜とパンを少しずつ食べ、どのグラスからも一滴ずつワインを飲みました。というのは、ひとつのお皿から全部取ってしまうのが嫌だったからです。そして、とても疲れていたので、ベッドに横になりました。けれども、どのベッドもうまく合いません。長すぎたり短すぎたりしました。最後に七つ目のベッドがちょうどよかったので、そこに横になったまま、すべてを神様におまかせして眠りました。

解説:小人なのにベッドが長すぎる?

「どのベッドもうまく合いません。長すぎたり短すぎたりしました」と白雪姫の目線で語られますが、小人のベッドが「長すぎたり」は、つっ込みどころではありますね。まあ、ですが、小人がひとつの大きなベッドにスペースを持て余して寝ていることもあるのですかね。

11:七人の小人、帰宅

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©Disney

初稿
やがて、七人の小人が、一日の仕事を終えて帰ってくると、小人たちはみな口々に言いました。

「だれが、ぼくのお皿からとって食べたのだろう?
だれが、ぼくのパンをちぎって食べたのだろう?
だれが、ぼくフォークで食べたのだろう?
だれが、ぼくのナイフで切って食べたのだろう?
だれが、ぼくのグラスから飲みものを飲んだのだろう?」

初版
夕方になると、七人の小人が仕事から帰ってきました。そして、七つの明かりをつけると、誰かが家に来たことがわかりました。
最初の小人が言いました。
「ぼくの椅子に座ったのは誰?」
二番目の小人が言いました。
「ぼくのお皿から食べたのは誰?」
三番目の小人が言いました。
「ぼくのパンをちぎって食べたのは誰?」
四番目の小人が言いました。
「ぼくの野菜をとって食べたのは誰?」
五番目の小人が言いました。
「ぼくのフォークを使って食べたのは誰?」
六番目の小人が言いました。
「ぼくのナイフで切って食べたのは誰?」
七番目の小人が言いました。
「ぼくのグラスから飲んだのは誰?」

第2版/第7版
辺りがすっかり暗くなったころ、この小屋の住人たちが帰ってきました。それは、山の中で鉱石を掘っている七人の小人でした。小人たちは七つの小さな明かりを付けました。そして、小屋の中が明るくなると、誰かがこの小屋に入った者がいることに気づきました。なぜなら、小屋の中の様子が、朝、出ていった時と違っていたからです。
最初の小人が言いました。
「ぼくの椅子に座ったのは誰?」
二番目の小人が言いました。
「ぼくのお皿から食べたのは誰?」
三番目の小人が言いました。
「ぼくのパンをちぎって食べたのは誰?」
四番目の小人が言いました。
「ぼくのおかずをとって食べたのは誰?」
五番目の小人が言いました。
「ぼくのフォークを使って食べたのは誰?」
六番目の小人が言いました。
「ぼくのナイフで切って食べたのは誰?」
七番目の小人が言いました。
「ぼくのグラスから飲んだのは誰?」

四番目の小人の主張が、初版では「野菜」だったのが、第2版から「おかず」に変わってます。

解説:昔話の繰り返し

あと二人は?
初稿は、五人しかしゃべっていません。

七つの明かりが加わる
初版で、メルヘンっぽいアイテムの七つの明かりが登場します。

昔話の繰り返し
字面だけを見ると、読む気が失せてしまいそうですが、昔話は文字ではなく、音声で聞かせる口承文学です。声で聞きながら三番目くらいの小人になると、聞き手はつぎを予測する素地が出来上がっていて、話の進行と共に気持ちよくはまっていく感覚を味わうことになります。昔話のような口承文学にはよくある仕掛けですね。

12:七つの明かりと眠る白雪姫

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初稿
すると、今度は最初の小人が言いました。
いったいだれが、ぼくのベッドに乗ったのだろう?
すると、二番目の小人が言いました。
おや、ぼくのベッドにも、だれか寝たあとがあるぞ。

三番目も、四番目も、同じように言いました。そして、つぎつぎにそう言ったのですが、最後の七番目の小人のベッドの中に、白雪姫が横になっているのを見つけました。けれども、白雪姫があんまりかわいらしくて気に入ったので、小人たちは気の毒に思って、そのまま寝かせておくことにしました。七番目の小人は、六番目の小人のベッドで、なんとか眠らなければなりませんでした。

初版
それから、最初の小人があたりを見まわして言いました。
「ぼくのベッドに、あがったのは誰だろう?」
二番目の小人が言いました。
「おや、ぼくのベッドにも誰か寝たあとがあるぞ!」
それから、残りの小人たちもつぎつぎにそう言いました。
そして、七番目の小人が自分のベッドを見ると、そこには白雪姫が横になって眠っているのがわかりました。

小人たちは、みんなかけ寄ってきて、驚いて叫び声を上げ、七つの明かりをとってきて、白雪姫をつくづくながめました。
「これはまあおどろいた! これはまあおどろいた!」
と、みんな叫びました。
「この子は、なんて美しいんだろう!」
小人たちは、この子を見てとても喜びました。そして起こさないで、そのままベッドの中に寝かせておきました。七番目の小人は、仲間たちのベッドにそれぞれ一時間ずつ入って眠り、そのうちに夜が明けました。

第2版/第7版
それから、最初の小人が振り向くと、自分のベッドの上に、大きなくぼみがあるのに気づきました。それで小人は言いました。
「だれか、ぼくのベッドにあがったヤツがいるぞ!」
ほかの小人たちは、それぞれみんな走っていってさけびました。
「おや、ぼくのベッドにも、だれか寝たヤツがいるぞ!」
ところが、七番目の小人が自分のベッドを見ると、そこには白雪姫が横になってぐっすり眠っていました。

それで、小人は仲間を呼びました。仲間の小人たちは、皆かけよってきて、驚きの声をあげ、七つの明かりをもってきて、白雪姫を照らしてみました。
「こいつは、おどろいた! こいつは、おどろいた!」
と、小人たちは叫びました。
「この子は、なんてきれいな娘なんだろう!」
そして、とてもうれしかったのでその子を起こさず、そのままベッドで寝かせておきました。そこで、七番目の小人は、仲間のベッドにそれぞれ一時間ずつ入って眠りました。

解説:小人の睡眠時間は六時間?

変化があるのは、白雪姫に寝場所を奪われた七番目の小人の処遇ですね。

  • 初稿  :六番目の小人のベッドに入れてもらう
  • 初版以降:ほか六人の小人に一時間ずつベッドに入れてもらう

六人の小人のベッドで、一時間ずつと眠ったいうことですから、小人の睡眠時間は六時間?ですかね。

13:翌朝の初対面

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初稿
さて、あくる日の朝、白雪姫がぐっすり眠って目を覚ますと、七人の小人たちは白雪姫に、いったいどうしてこんなところへ来たのかとたずねました。すると、白雪姫は小人たちにすべてを話して聞かせました。お母さんが、森の中に置き去りにして、馬車で逃げて行ってしまったことも話しました。

初版
さて、白雪姫が目を覚ますと、小人たちは白雪姫に君は誰なんだ、そして、どうしてこの家にやってきたんだとたずねました。すると、白雪姫は小人たちに、お母さんが自分を殺そうとしたこと、けれども狩人が命だけは助けてくれたこと、そして、一日じゅう走りまわって、しまいにこの小屋にたどり着いたことを話して聞かせました。

第2版/第7版
朝になると、白雪姫は目を覚ましました。そして、七人の小人を見ると驚きました。けれども、小人たちはやさしくたずねました。
「きみの名前はなんていうの?」
「わたし、白雪姫というの」
と、答えました。

「どうしてきみは、ぼくらの家に来たんだい?」
小人たちは、そう聞きました。
すると、白雪姫は小人たちに、継母に殺されそうになったこと、けれども、狩人が命だけは助けてくれたこと、そして、一日じゅう走りに走って、とうとうこの小屋を見つけたことを話しました。

14:小人、家庭の仕事を言いつける

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初稿
小人たちは、白雪姫を気の毒に思って、自分たちのところに住むようにすすめました。自分たちが、昼間鉱山の仕事にいっている間、食事の用意をしてくれと頼みました。けれども、女王様のことだけは用心して、決してだれも小屋の中へ入れてはいけないと言いました。

初版
すると、小人たちは気の毒に思って言いました。
「きみが、ぼくたちの家を世話をしてくれて、料理や、裁縫や、ベッドメーキングや、洗濯や、編み物など、そして家の中をきちんと整理整頓しておいてくれるなら、ぼくたちのところにずっといていいよ。なにも困らせることはないから。夕方になると、ぼくらはうちへ帰ってくるんだ。それまでに、食事の支度をしておいてくれ。けれども、昼間ぼくたちは鉱山に仕事にいき、金を掘ってくるんだ。きみはひとりになる。女王様に気をつけるんだよ。誰もうちの中に入れてはいけないよ」

第2版/第7版
小人たちは、言いました。
「もし、きみが、料理や、裁縫や、ベッドメーキングや、洗濯や、編み物など、そして家の中をきちんと整理整頓しておいてくれるなら、ずっと、ぼくたちのところにいていいよ。なにも不自由はさせないから」
白雪姫は、小人たちに、そのとおり約束しました。
それからは、白雪姫が家の中の仕事を引き受けました。朝になると、小人たちは山へ、鉱石や金を掘りに出かけ、夜になると帰ってきました。そのときには、ごはんの用意ができていなければなりません。むすめは昼間ひとりでいました。それでやさしい小人たちは、白雪姫にこう言って注意しました。
「継母に注意するんだよ。近いうちに、きみがここにいることがわかるだろうからな。だれも、うちの中に入れてはいけないよ」

第7版ではほとんど同じですが、
小人「(前略)なにも不自由はさせないから」
のあとに、白雪姫の返事が入ります。

「ええ、よろこんで」
白雪姫は、こう言って、そのまま小人たちの家にいました。

と、白雪姫の返事を付け足しています。これは第6版からの変更です。

解説:小人の「家庭の仕事」は食事だけだった!

白雪姫が、小人の家に滞在する交換条件として、七人の小人が「家庭の仕事」を言い渡す場面です。
はじめの初稿では、たった一つ食事の用意だけでした。マリーに聞いた時点ではひとつだけだったのですね。初版以降はかなり増えています。家の世話、料理、裁縫、ベッドメーキング、洗濯、編み物、整理整頓(掃除)といった感じです。文章の中ですべてが並列に並んでいるわけではないので、「家の世話」とかは微妙ですが、無理にこじつけて7つにしようとすれば、7つにはなりますね。これは第7版まで変わりません。

なお、ディズニーの7人の小人シーンの違いについてはこちらで比較しています。
【白雪姫】7人の小人シーン 原作との違いを比較【ディズニー&グリム童話】

15:魔法の鏡に問いかける

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初稿には、この場面はありません。

初版
一方、女王様は、自分がまたこの国で一番美しい人になったと思い、朝になると鏡の前にいってたずねました。
「鏡よ、壁の鏡。この国で一番美しいのは誰?」
すると鏡が、また答えました。
「女王様、あなたはここでは一番美しい。
けれども、七つの山を越えた向こうにいる白雪姫は、あなたより千倍美しい!」

第2版/第7版
ところで、女王様は白雪姫の肺と肝臓を食べてしまったとばかり思い込んでいたので、自分がまた一番美しい女になったと信じていました。そして、鏡の前に立って言いました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国で一番美しいのは誰?」
すると、鏡が答えました。
「女王様。ここではあなたが一番美しい。
けれども、七つの山を越えた、七人の小人のところにいる白雪姫は、あなたより千倍美しい!」

解説:初稿は鏡から知るのではない

初稿の生存確認は、鏡を通してではなく、ただ理由なく知ることになります。白雪姫の類話を比較しても、鏡を通す方が珍しいですね。ただ、なんとなく知ることになるというのが多いです。

16:女王、怒り再燃

挿し絵

初稿
さて、女王様は白雪姫が森の中で死なないで、七人の小人たちのもとで暮らしていることを知ると、年とった物売り女の着物を着て、その小屋まで行き、(次へ)

初版
女王は、これを聞くと大変驚いて自分がだまされたこと、そして狩人が白雪姫を殺さなかったことがわかりました。そして、七つの山の中には七人の小人しかいないので、白雪姫が小人たちのところへいって救われたことがすぐにわかりました。そこで、女王は、いったいどうやったらあの子を殺すことができるものかと、また改めてよく考えてみました。なにしろ、あの鏡があなたこそ国中で一番美しい女ですと言わない限り、心が安まらなかったからです。そして、王妃にとっては、もうなにも信じられなかったので、自分自身で年をとった物売りに変装して顔を塗りたくりました。もう誰もそれが王妃だと気付かないほどです。

第2版/第7版
これを聞いて、王妃はびっくりしました。なぜなら、この鏡はけっして嘘を言わないことを知っていたからです。狩人にまんまとだまされたこと、白雪姫がまだ生きていることがわかりました。白雪姫が、七つの山を越えた、七人の小人のところにいるということを聞いたので、なんとかして、白雪姫を殺せないものかと考えました。なにしろ、自分が国中で一番美しいものにならないかぎり、嫉妬でじっとしていられなかったのです。王妃は、考えに考えたあげく、顔に色をぬり年をとった物売りの身なりをして誰にもわからないようになりました。

17:女王の訪問① 物売りに変装

森

初稿
その小屋の前へいき、品物を持ってきたので、入れてほしいとたのみました。
白雪姫は、それが女王とは気づかず、窓越しに言いました。
「わたしは、だれもうちの中へ入れてはいけないと言われているのよ」
すると、物売りの女は言いました。
「でも、まあ、ごらんなさいよ。わたしはとてもきれいな結びひもを持っているんだよ。あんたになら安く売ってあげるよ!」
白雪姫は考えました。わたしはちょうど、結びひもが必要だったわ。このおばさんをうちの中に入れたって、別にまずいことはないわ。いい買い物ができるでしょう。そう思って、白雪姫はドアを開けてむすびひもを買いました。

初版
それから、出かけていってあの家に着きました。女王様はドアをたたいて大声で言いました。
「あけておくれ。あけておくれ。私は年をとった物売りだよ。いい品物を売りに来たよ」
白雪姫は窓から顔を出しました。
「いったい、なにを売りに来たの?」
「飾りひもだよ。おじょうちゃん」
と、おばあさんは言って、飾りひもを一つ取り出しました。そのひもは、黄色と赤と青の絹で織られたひもでした。
「このひもがいいかい?」
「ええ」
と、白雪姫は言いました。
そして、この親切なおばあさんは、心もやさしそうだし、この人ならきっと中に入れてあげてもいいわ。それで、ドアの鍵を開けて、飾りひもを買うことにしました。

第2版/第7版
そういう身なりをして、王妃は七つの山を越えて、小人の家へ行き、とびらをたたいて言いました。
「いい品を売りにきたよ!買わないかい!」
白雪姫は窓から顔を出して言いました。
「こんにちは、おばあさん。いったい、なにを売りにきたの?」
「よい品だよ、きれいな品物だよ」
と、物売りは答えました。
「いろんな色のひもだよ」
そう言いながら、物売りの女は、色とりどりの絹のひもを取り出して白雪姫に見せました。こんなに正直な話し方をするいいおばあさんなら、うちの中に入れてもいいわ、と白雪姫は思いました。そして、戸口の鍵を開け、色とりどりのひもを買いました。

18:1度目の死 ひも

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初稿
白雪姫が、ひもを買うと物売りの女は話しはじめました。
「だけどあんたは、なんてだらしなく結んでいるの。みっともないよ。おいで、もっと上手に結んであげるから」
そう言ったかと思うと、物売りのおばあさんは、結びひもを手にとって、白雪姫を力いっぱい締め上げました。それで、白雪姫は死んだようになって倒れてしまいました。それを見て、女王はそこを立ち去りました。

初版
「でも、あんたはずいぶんみっともない結び方をしているねえ」
と、おばあさんは言いました。
「おいで、一度ちゃんと結び直してあげよう」
白雪姫は、物売りの前に立ちました。すると、物売りは飾りひもを手にとって力いっぱいきつくしめたので、白雪姫は息ができなくなり、死んだようになって倒れました。それで、物売りは満足して帰っていきました。

第2版/第7版
「おじょうちゃん」
と、物売りのおばあさんが言いました。
「あんたのむすびかたはひどいねえ! おいで、一度ちゃんとむすんであげよう」
白雪姫は、少しも疑わず物売りのおばあさんの前に立って、新しいひもで胸をしめてもらいました。ところが、年をとった物売りは、すばやく力いっぱいきつくしめたので、白雪姫は息ができなくなり、死んだようになって、倒れてしまいました。
「たしかに、お前の美しさが一番だったよ」
と、悪い女は言って帰っていきました。

第7版では
第2版「あんたのむすびかたはひどいねえ!」
→第7版「なんてかっこうしているの!」
に変わっています。

ひも・くし・リンゴがどうして武器に?

グリム童話では、ひも・くし・リンゴを武器にしていますが、白雪姫の民話ではどうなっているのだろうと、調べた記事が、【白雪姫】民話の女王も毒リンゴで殺したのか?【美を高める道具】になっています。

19:小人による1度目の蘇生 ひも

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初稿
小人たちが、家へ帰ると白雪姫が床に倒れていました。それで、みんなすぐに誰が来たのかわかりました。そして、急いでひもをほどいてやりました。すると、白雪姫はまた息を吹き返しました。小人たちは、白雪姫に向かって、これからはもっと気をつけるように厳しく注意しました。

初版
それから、まもなく夜になりました。七人の小人たちが帰ってきました。そして、かわいい白雪姫がまるで死んだように床に倒れているのを見てびっくりしました。みんなは、白雪姫を抱いて起こしてみました。すると、ひもできつくしめられているのがわかったので、そのひもをまっぷたつに切りました。白雪姫は、息をしはじめ生き返りました。
「これは、あの女王様にちがいない」
と、小人たちは言いました。
「あの人が、きみの命を奪おうとしたんだ。気をつけろよ。そして、もう絶対だれもうちの中へ入れてはいけないよ」

第2版/第7版
それから、まもなく夕方になると七人の小人が帰ってきました。けれども、かわいい白雪姫が床に倒れているのを見てびっくりしました。白雪姫は、まるで死んだようにぴくりとも動きません。小人たちは、白雪姫を抱き上げてみました。すると、ひもできつくしめられていることがわかったので、そのひもをまっぷたつに切りました。白雪姫は、かすかに息を吹き返しだんだんに生き返ってきました。小人たちは、白雪姫から何があったのかを聞いたあと小人たちは言いました。
「その年とった物売りの女は、女王様にちがいない。気をつけるんだよ。ぼくらが、そばにいないときは、だれもうちへ入れてはいけないよ」

20:魔法の鏡に確認 ひも

初稿には、この場面はありません。

初版
ところが、女王様は鏡にたずねました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国で一番美しいのは誰?」
鏡が答えました。
「女王様、あなたはここでは一番美しい。
けれども、七人の小人のところにいる白雪姫は、あなたより千倍も美しい」

第2版/第7版
女王様は、お城へ帰ると、鏡の前へ行って聞きました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国で一番美しいのは誰?」
すると鏡が答えました。
「女王様、あなたはここでは一番美しい。
けれども、山やまをこえた七人の小人のところにいる白雪姫は、あなたより千倍も美しい!」

21:女王の訪問② お婆さんに変装

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©Disney

初稿
女王様は、むすめがまた生き返ったことを知ると、じっとしていられなくなって、また変装して、小屋へやってきて、白雪姫に美しいくしを売りつけようとしました。白雪姫は、そのくしがすっかり気に入ってしまい、悪い気持ちが起こって、ドアを開けてしまいました。

初版
王妃は、たいへん驚き、血が全部心臓へ逆流しそうな感じでした。というのは、白雪姫がまた生き返ったことがわかったからです。それから、女王はいったいどうやったらいいものかと昼も夜も考えました。そして、毒のくしを作り、まったく別人のように変装して、また出かけていきました。女王様は、ドアをたたきました。けれども、白雪姫は大声で言いました。
「私は、だれも入れてはいけないと言われているの」
すると、女王はあのくしを取り出しました。白雪姫は、くしはピカピカ輝いているのを見て、それにこのお婆さんはまったく見たことがない人だったので、とうとうドアを開け、そのくしを買いました。

第2版
王妃は、これを聞くとびっくりして、血がみんな頭にのぼってしまいました。なにしろ、白雪姫がまたまた生き返ったことが、わかったからです。女王は、あのむすめを殺すにはどうしたものかと、また考えてみました。そして、毒のくしをつくりました。それから、変装してこの前とはまったく別の貧しい女の姿になりました。
それから、女王様は出かけていって七つの山を越えて小人の家へ行き、戸口をたたいて言いました。
「いい品を売りにきたよ! 買わないかい!」
白雪姫は、窓から顔を出して言いました。
「わたしは、だれもうちへ入れてはいけないことになってるの」
けれども、年をとった女は言いました。
「まあ、この美しいくしを見てごらん」
そして、毒のくしを出して白雪姫に見せました。白雪姫は、そのくしがすっかり気に入り、ついにだまされて戸口を開けてやりました。

第7版
王妃は、これを聞くとびっくりして、血がみんな頭にのぼってしまいました。なにしろ白雪姫がまたまた生き返ったことがわかったからです。
「よし、それなら、なんとかしておまえを殺す手立てを考え出してやる」
女王様はそう言って、とくいの魔術で毒のくしをつくりあげました。それから、変装してこの前とは別のおばあさんの姿になりました。それから出かけていって、七つの山を越えて七人の小人たちのところへいき、戸口をたたいて言いました。
「いい品を売りにきたよ! いらんかね!」
白雪姫は、窓から顔を出して言いました。
「よそにいってちょうだい。わたしは、だれもうちへ入れてはいけないことになってるの」
「見るだけなら、かまわないだろう」
と、おばあさんは言って、毒入りのくしを取り出し高くかかげて見せました。白雪姫は、そのくしがすっかり気に入り、ついだまされて戸口を開けてやりました。

22:2度目の死 くし

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初稿
おばあさんは、小屋に入ってくると、白雪姫の金色の髪をとかしはじめました。そして、そのくしを深く突き刺したので、白雪姫は死んだようになって倒れました。

初版
「おいで、あんたの髪をとかしてあげよう」
と、年とった女が言いました。けれども、くしが白雪姫の髪の毛に入れられるやいなや、白雪姫は床に倒れて死んでしまいました。
「さあ、これで、おまえは倒れたままになるだろう」
と、王妃は言いました。そして、心はすっかり軽くなりました。それから、家へ帰っていきました。

第2版
白雪姫が、そのくしを買うと、年とった女が言いました。
「じゃ、ひとつ、わたしがあんたの髪をとかしてあげよう」
白雪姫は、少しも疑いません。年とった女は、くしを白雪姫を髪の毛に深く刺しました。すると、すぐに毒がきいて、白雪姫は倒れて死んでしまいました。
「さあ、いつまでも、そこに寝ててもらおう」
女王様は、そう言って帰って行きました。

第7版
買うことに決まると、おばあさんが言いました。
「一度、あんたの髪をきれいにとかしてあげよう」
かわいそうに、白雪姫は少しも疑わず、おばあさんの言うとおりにしてもらいました。ところが、くしを髪の毛に刺すと、たちまち毒がきいて、白雪姫を気を失って倒れてしまいました。
「ざまあみろ、絶世の美女のおまえも、これでおしまいだ」
悪い女は、そう言って帰っていきました。

解説:初稿では、金髪の白雪姫!

もともと白雪姫は、金髪だったのですね。第2版以降に「黒檀のように黒い髪」が出てきますから、途中から黒髪に変更になったことがわかります。ディズニーの影響なのか、白雪姫といえばイメージは黒ですよね。

23:小人による2度目の蘇生 くし

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初稿
七人の小人は、うちへ帰ってくると入り口が開いているのに気づきました。見ると、白雪姫が床に倒れています。それで、誰がこんな悪いことをしたのか、すぐにわかりました。小人たちは、急いで白雪姫の髪からくしを引き抜いてやりました。すると、白雪姫はまた生き返りました。小人たちは白雪姫にもう一度だまされるようなことがあるなら、今度こそは助けることはできないだろうと言いました。

初版
けれども、小人たちがちょうどよい時にもどってきました。そして、事件を知り、毒のくしを髪の毛から抜き取りました。すると、白雪姫は目をあけました。また生き返ったのです。そして、これからはもう誰もうちの中へ入れないと小人たちに約束しました。

第2版/第7版
ところが、幸いなことに夕方になって、七人の小人がうちへ帰ってきました。そして、白雪姫が床に倒れているのを見ると、小人たちはすぐにあの悪い継母がまた白雪姫を殺そうとしたのだと思いました。そして、あちこち探して毒のくしを見つけました。そのくしを抜き取ると、白雪姫は我に返り、今日の出来事を話して聞かせました。それを聞くと、小人たちは、用心深くするように、そして、だれにもとびらを開けてやらないようにともう一度注意しました。

第7版はほとんど同じですが、
第2版「(前略)あの悪い継母が、また白雪姫を殺そうとしたのだと思いました」
→第7版「継母が怪しいと思いました」
という変化があります。

24:魔法の鏡に確認 くし

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初稿には、この場面はありません。

初版
ところが、女王様は鏡にたずねました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国で一番美しいのは誰?」
鏡が答えました。
「女王様、あなたはここでは一番美しい。
けれども、七人の小人のところにいる白雪姫は、あなたより千倍も美しい」

第2版/第7版
女王様は、お城へ帰ると、鏡の前へ行って聞きました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国で一番美しいのは誰?」
すると鏡が答えました。
「女王様、あなたはここでは一番美しい。
けれども、山やまをこえた七人の小人のところにいる白雪姫は、あなたより千倍も美しい!」

25:毒リンゴ製造 女王の訪問③ 百姓女に変装

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初稿
女王は、また白雪姫が生き返ったことを知るととても腹を立てました。そして、百姓女に変装してリンゴをひとつ持って出かけました。そのリンゴは赤い方の半分に毒が仕掛けられていました。

初版
女王は、またこの言葉を聞くと怒りでからだがぶるぶるふるえました。
「よし、たとえ、私の命にかけても、白雪姫を殺してやる」
それから、王妃は秘密の部屋に入っていきました。誰も入れないようにして、強い猛毒のリンゴをつくりました。それは、外から見るととても美しく真っ赤なリンゴでした。このリンゴを見ると、誰でも食べてみたいと思うほどでした。それから、王妃は百姓女に変装して小人の家に行ってドアをたたきました。

第2版/第7版
鏡が、こう言うのを聞くと王妃は怒りのために体をふるわせて言いました。
「白雪姫は、なんとしても殺してやる。たとえ、わたし自身の命にかけても!」
それから、王妃は誰も入ってこない秘密のさびしい小部屋に入って、強い強い毒のリンゴをつくりました。外から見ると、それは赤くてきれいなリンゴで、そのリンゴを見ると、誰でも欲しくなるようなリンゴでした。けれども、ひときれでもそれを食べようものなら、たちまち死んでしまうのです。リンゴができあがると、王妃は顔に色をぬり、百姓女に変装して、七つの山を越えて小人の家へ行き、とびらをたたきました。

第7版では
第2版「それは赤くてきれいなリンゴで」
→第7版「それは白と赤のほっぺたをしたきれいなリンゴ」
に変更されています。

解説:リンゴの半分に毒、毒リンゴづくりの部屋

リンゴの赤い方の半分に毒というのは初稿からありますね。昔話に出てくるリンゴは、ほかの昔話を見ても、どうも半分にされる傾向があるようです。

初版から、毒リンゴをつくる秘密の部屋が新しく入りました。

26:3度目の死 リンゴ

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初稿
白雪姫は、じゅうぶん用心してその女を小屋の中へ入れませんでした。けれども、百姓女はリンゴを窓から白雪姫に渡し、とてもうまく振る舞ったので、ぜんぜん気づかれませんでした。白雪姫は、リンゴの美しく赤い方の半分を食べて、床に倒れて死んでしまいました。

初版
白雪姫が、顔を出して言いました。
「私は、誰もうちの中に入れてはいけないの。小人たちにきつく止められてるの」
「ああ、いいとも、おまえさんが嫌なら無理にとは言わないよ」
と、百姓女は言いました。
「だが、私はリンゴを全部売ってしまいたいんだ。さあ、ひとつあげるから試しに食べてごらん」
「いいえ、私は何ももらってはいけないんです。小人たちがそう言いました」
「おまえさんは、きっとこわがっているんだね。それなら、私がまっぷたつに割って、半分私が食べよう。もう半分のきれいな赤い方をあんたにあげるよ」
ところが、そのリンゴはとてもじょうずにできていて、赤い方の半分だけに毒が入っていたのです。白雪姫は、百姓女がリンゴを食べるのを見て、どうしても食べてみたくなりました。それで、とうとう窓から手を出して残りの半分を受け取り、かじりつきました。ひと口食べるやいなや、たちまち白雪姫は死んで床に倒れてしまいました。

第2版
白雪姫は、窓から顔を出して言いました。
「わたしは、誰も入れてあげられないの。小人たちに禁じられているの」
「そうかい。ほしくなけりゃ、それでいいんだよ」
と、百姓女は言いました。
「ただ、リンゴを全部かたづけてしまいたくてね。ほら、ひとつ、あんたにあげるよ」
「いいえ、いりません」
と、白雪姫は答えました。
「わたしは、なにももらってはいけないの」
「おや、あんたは、きっと毒でもありゃしないかとこわがってるんだね。あんたはこの赤い方をお食べ。わたしは白い方を食べるから」
と、年をとった百姓女が言いました。ところが、このリンゴはとてもじょうずにできていて、赤い方にだけ毒が入っていたのです。白雪姫は、この美しいリンゴを見て、食べてみたくてたまりませんでした。そして、百姓女がリンゴを半分食べるのを見ると、もう我慢できなくなって、手をのばしてリンゴを受けとりました。ひと口食べると、床に倒れて死んでしまいました。これを見ると、女王が言いました。
「今度こそ、誰にもおまえを起こすことはできないぞ」

第7版
白雪姫は、窓から顔を出して言いました。
「わたしは、誰も入れてあげられないの。小人たちに禁じられているの」
「そうかい。ほしくなけりゃ、それでいいんだよ」
と、百姓女は言いました。
「ただ、リンゴを全部かたづけてしまいたくてね。ほら、ひとつ、あんたにあげるよ」
「いいえ、いりません」
と、白雪姫は答えました。
「わたしは、なにももらってはいけないの」
「おや、あんたは、きっと毒でもありゃしないかとこわがってるんだね。ごらん、リンゴを二つに切ってあげよう。赤い方をあんたがお食べ。わたしは白い方を食べるから」
と、年をとった百姓女が言いました。ところが、このリンゴはとてもじょうずにできていて、赤い方にだけ毒が入っていたのです。白雪姫は、この美しいリンゴを見て、食べてみたくてたまりませんでした。そして、百姓女がリンゴを半分食べるのを見ると、もう我慢できなくなって、手をのばして毒の入った方の半分を受けとりました。ひと口食べると、床に倒れて死んでしまいました。すると、女王様はぞっとするような目つきでそれを見ていましたが、やがて高笑いをして言いました。
「雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒いだって! 今度こそは、小人たちだって、おまえ生き返らせることはできやしないぞ」

27:鏡「女王様、あなたが一番美しい」

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初稿には、この場面はありません。

初版
女王は、よろこんで家へ帰り、鏡にたずねました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国中で、一番美しい女は誰?」
すると、鏡が答えました。
「女王様、ここではあなたが一番美しい」

「やれやれ、これで安心だ」
と、女王様は言いました。
「なにしろ、私がまたこの国で一番美しい女になったんだから。そして白雪姫は今度こそ生き返ることはないだろう」

第2版/第7版
女王は、よろこんで家へ帰り、鏡にたずねました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国中で、一番美しい女は誰?」
すると、鏡が答えました。
「女王様、ここではあなたが一番美しい」

これで、王妃の嫉妬心は、やっとのことでおさまりました。なんとかいちおうは、おさまったのです。

第7版は最後が微妙に違います。
第2版「なんとかいちおうは、おさまったのです」
→第7版「嫉妬心が、おさまりがつくということがあればの話だが…」
むずかしい表現ですが……。

なお、魔法の鏡については、こちらの記事で探ってます。
【白雪姫】魔法の鏡 ディズニー&グリム童話のセリフ【鏡の正体】

28:七人の小人、帰宅

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初稿
やがて、七人の小人が帰ってきましたが、もう助けてあげることはできませんでした。それで、すっかり悲しみながら白雪姫をほうむりました。

初版
小人たちは、夕方になって山から帰ってきました。すると、白雪姫は床に倒れて死んでいました。小人たちは、白雪姫の飾りひもをといてみたり、髪の毛の中に毒のものが刺さっていないか調べてみました。けれども、なんの役にも立ちませんでした。小人たちは、白雪姫を生き返らせることはできませんでした。そこで、小人たちは白雪姫を担架に乗せて、七人がみんなそのまわりにすわって、三日間というもの泣きに泣きました。

第2版/第7版
夕方になって、小人たちがうちへ帰ってみると、白雪姫が床に倒れていました。少しの呼吸もなく死んでいました。小人たちは白雪姫を抱き上げて、なにか毒のものはないかと探してみました。ひもをゆるめ、髪をとかし、からだを水とワインとで洗ってみましたが、なんの役にも立ちませんでした。かわいい白雪姫は、死んでしまい、生き返ることはありませんでした。小人たちは、白雪姫を担架に乗せて七人がみんな、そのまわりにすわって担架にすがって泣きました。三日間というもの泣きに泣きました。

29:ガラスの棺

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初稿
小人たちは、ガラスの棺の中に白雪姫を横たえました。白雪姫は、ガラスの棺の中で生きている時と少しも変わらない姿で眠っていました。小人たちは、棺に白雪姫の名前と、王室の出身であることを書き、昼も夜も見守っていました。

初版
それから、白雪姫を土の中に埋めようとしました。けれども、白雪姫はまだあまりにも生き生きしていて、少しも死人のようには見えないし、その美しい赤い頬も少しも変わっていませんでした。それで、小人たちはガラスの棺を作らせ、白雪姫をその中に寝かせて、外からもよく見えるようにしました。そして、その棺に金文字で名前を書き、その生い立ちも書きつけました。そして、毎日ひとりずつ家に残って、棺を見張ることにしました。

第2版・第7版
それから、小人たちは白雪姫を土に埋めようと思いました。けれども、まるで生きている人間のように生き生きとしていて、頬は赤く美しいので、小人たちは言いました。
「この人をあの黒い土の中に埋めることは、とてもできない」
小人たちは、外から白雪姫を見ることができるようにガラスの棺を作らせ、その中に白雪姫を入れて、その上に金文字で名前と王家の出身であることを書き付けました。それから、棺を山の上にかつぎあげて、いつもひとりそこに残って、見張りの番をすることになりました。動物たちもやってきて、白雪姫のために泣きました。まず、最初にフクロウがきました。それから、カラスが来て、最後にハトがきました。

グリム童話『白雪姫』結末部分(ここから3人の異なる話し手)

これまでは、初稿のマリー・ハッセンプフルークの語りをもとにして、グリム兄弟が手を加えてきた変遷を見てきたわけです。ですが、ここから先、初稿はそのままマリーの語りですが、初版以降は話し手が別人になっています。ですから、初稿と初版以降はまったく内容が異なります。

こういうことになったのは、おそらく初稿のままでは出版できないという判断があったためだと言われます。じっさい、グリム童話ではこういった大胆な合成は珍しいことではありません。

とりあえず、最後まで短いですし、今までのように他の版との比較も難しいので、いったん初稿は最後まで見てしまいましょう。それでは、出版に至らなかったマリーの結末部分です。

初稿は、あまりに特殊なので最後まで

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初稿
ある日のこと、白雪姫の父親である王様が国に帰ってきました。そして、七人の小人が住んでいる森の中をちょうど通らなければなりませんでした。王様は、森の中でその棺を見つけ、棺に書かれてあることを読むと、愛する娘の死をたいへん悲しみました。王様は、従者の中に有能な医者たちを連れていました。その医者たちは、小人から白雪姫の遺体をもらいうけて、部屋の四隅に縄を張りました。すると、白雪姫はまた生き返りました。それから、みんなでお城へ帰りました。白雪姫は、ある美しい王子と結婚しました。結婚式のとき、王妃は、真っ赤に焼かれた鉄の上履きをはいて死ぬまでダンスを踊らなければなりませんでした。

《終わり》

解説:マリー・ハッセンプフルークの結末部分

あまり耳慣れない話ではないでしょうか。父親の登場、従者の医者、奇妙な蘇生措置はあまり見られないかと思います。王子との結婚も唐突ですし、文章も少しぎこちなさがあって、最後の方は駆け足で終わっていく感じがあります。そんな風変わりな内容でも、継母の刑罰がしっかりあるのは驚きですが…。

この部分、グリム兄ヤーコプのメモ書きが残されてあります。
この終わり方はどうも正しくないようだ。何か欠けている
このメモは「部屋の四隅に縄…」の辺りを指して書かれてあるようです。

グリム兄弟から見ても、マリーが語ったこの結末部分に対して、いい印象を持っていなかったようですね。

とにかく言えることは、このまま出版しなかったということです。

初稿につきましては、これをもって幕を閉じました。そして、初版は、結末まで、フェルディナンド・ジーベルトの語りに変わります。それをまた土台にして、グリム兄弟が手を入れて版を重ねることになります。

30:白雪姫の長い眠り

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初版
白雪姫は、そうやって長い長い間、棺の中に寝ていました。けれども、少しも腐らず、あいかわらず、雪のように白く、血のように赤かったのです。そして、もし目をあけることができるなら、その目はきっと、黒檀の木のように真っ黒だったことでしょう。なぜなら、白雪姫はまるで眠っているように、そこに横たわっていたからです。

第2版/第7版
さて、白雪姫はそうやって、長い長い間、棺の中に横たわっていました。それでも、少しも腐らず、まるで生きて眠っているように見えました。いつまでたっても、雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒い髪をしていたのです。

白、赤、黒、再び!

冒頭にあった母親ひとりの雪のシーンでは、白、赤、黒の三色が印象的でした。白雪姫の死におよんで、再び静寂が訪れたとき、また、あの三色、白、赤、黒があらわれます。

31:王子様の登場と、棺をゆずる小人たち

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初版
あるとき、若い王子がこの小人の小屋へやってきて泊めてもらおうとしました。そして、部屋に入ると、ガラスの棺の中に白雪姫が横たわっており、七つの小さな明かりが、その棺を照らしていました。それを見ると、白雪姫があまり美しいので、いくら見ても見あきることはありませんでした。そして、金文字で書かれた名前を読み、その娘が王女であることを知りました。それで、王子様は小人たちに、死んだ白雪姫の棺を売ってくれるように頼みました。けれども、小人たちはどんなにお金を積まれても売ることはできないと言いました。それで、王子は小人たちにどうぞ贈り物としてください。自分は、この娘を見ないでは生きていくことはできない。そして、この世で一番愛しい人として、尊敬し、大切にしますと言いました。これを聞くと、小人たちは胸いっぱいになって、王子に棺をあげました。

第2版/第7版
あるとき、ひとりの王子様が森の中へ迷い込み、ひと晩泊めてもらうため、この小人の部屋へやってきました。王子は山の上にある棺と、その中に眠っている白雪姫を見て、金文字でそこに書かれていることを読みました。すると、王子は小人たちに言いました。
「この棺を僕にくれないか。そのかわり、あなたたちが欲しいものは、なんでもあげるから」
けれども、小人たちは答えました。
「世界中の黄金を全部やると言われたって、これをゆずるわけにはいきません」
すると、王子が言いました。
「それでは、贈り物としてくれないか。僕は、白雪姫を見ないでは、もう生きていくことはできない。僕は、白雪姫を僕の最愛の人として、尊敬し、大切にします」
王子がそう言うと、やさしい小人たちは胸いっぱいになって、贈り物として棺をあげることにしました。

解説:フェルディナンド・ジーベルトの語り

初稿では、父親が小人のもとにやってきましたが、話し手が変わると、やってきたのは王子ですね。王子は、白雪姫を気に入って小人から棺を譲り受けるという話になっています。そして、この話をもとにしてグリムが手直ししていくことになります。

32:王子様と棺

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初版
王子は、棺を城へ運ばせ、自分の部屋に置きました。毎日、そのわきにすわり込み、かたときも目を離すことができませんでした。外出しなければならないとき、王子は白雪姫を見られなくなるので悲しい気持ちになりました。棺がそばに置かれていなければ、ひと口も食事をとることができませんでした。

解説:眠っている美女に対する王子の奇妙な態度

この部分は、珍しいことに初版だけになります。初稿からは、話し手が変わっていますので、ジーベルトの語りの中にあった部分ですね。それで、第2版からまるまるカットされたということになります。

この場面は、王子と眠った王女、あるいは王子と棺との関係が語られることになります。眠っている美女に対する王子の異様な執着がよく描かれます。眠っているのに愛しさが止まらないというのはまだ可愛い方で、ガラスではない棺桶で顔が見えないのに棺桶そのものから離れられないとか、その最たる話は眠っている王女に○○して子供を産ませてしまうというこちらの話【超あらすじ】太陽と月とターリア(バジーレ:ペンタメローネ)【名前の意味】で、専門用語でネクロフィリア(屍体性愛)とも言われるところでして、、😱。

まあ、このシーンは見方によれば変態的ではあるのですが、眠り姫系の話ではよく見られるモチーフなので、大事なところだと思うのですけどね。ですが、他の版でも「棺がなくては生きていけない」と言っているので、小人たちに向けて誠実に愛の言葉を述べてはいるのですが、冷静に考えれば変ではあるのですよ。

33:偶然の蘇生 リンゴ

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初版
ところが、いつも棺をかついで歩きまわされている召使いたちは、とても腹を立てていました。あるとき、一人の召使いが棺のふたを開けて白雪姫をかつぎ上げて言いました。
「こんな、死んだ娘ひとりのおかげで、どうしておれたちは苦しめられなければならないんだ」
そうして、白雪姫の背中をドンッとなぐりました。すると、白雪姫がのみ込んでいたおぞましいリンゴのかけらが喉から飛び出して、白雪姫は生き返りました。

第2版/第7版
王子は、召使いたちに棺を肩にかつがせました。すると、召使いたちが藪の木に足を取られてよろめきました。その拍子に、のみ込んでいた毒リンゴのかたまりが、喉から飛び出しました。そして、白雪姫は生き返って身を起こしました。

第7版はほとんど同じですが、
第2版「生き返って身を起こしました」
→第7版「目を覚まし、棺のふたを押し上げ、起き上がり、生き返りました」
と、なっています。

34:王子様のプロポーズ

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初版
そこで、白雪姫は王子のところへ行きました。王子は、愛しい白雪姫が生き返ったので、うれしさのあまりどうしていいかわかりませんでした。それから、ふたりは一緒に食卓について楽しく食事をしました。次の日、結婚式が行われることになりました。

第2版/第7版
白雪姫は、言いました。
「あら、まあ、わたしはどこにいるの?」
王子は、すっかりよろこんで言いました。
「きみは、僕のそばにいるよ」
そして、白雪姫にこれまでのことを話して聞かせました。
「世界中のなによりも、きみのことを愛してる。一緒に父の城に行こう。僕の妻になってほしい」
白雪姫も、王子のことが好きになり、王子と一緒に行きました。結婚式が盛大に準備されました。

35:魔法の鏡に確認 リンゴ

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初版
ところが、女王様は鏡にたずねました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国で一番美しいのは誰?」
鏡が答えました。
「女王様、あなたはここでは一番美しい。
けれども、七人の小人のところにいる白雪姫は、あなたより千倍も美しい」

第2版/第7版
女王様は、お城へ帰ると、鏡の前へ行って聞きました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国で一番美しいのは誰?」
すると、鏡が答えました。
「女王様、あなたはここでは一番美しい。
けれども、山やまをこえた七人の小人のところにいる白雪姫は、あなたより千倍も美しい!」

36:女王の不安

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初版
これを聞くと、王妃はひどく驚き、不安でものも言えませんでした。けれども、嫉妬心のために結婚式へ行って、どうしても若い王妃を見てみたいと思いました。行ってみると、それはまさしく白雪姫だということがわかりました。

第2版
これを聞くと、女王は驚いて、とてもとても不安で口では表現できないほど不安になりました。本当は、結婚式などへは行きたくなかったのですが、嫉妬心に駆られて、どうしても若い王妃を見てみたいと思いました。広間へ入ってみると、若い王妃とは、あの白雪姫であることがわかりました。そして、驚きのあまり動けなくなってしまいました。

第7版
これを聞くと、悪い女は呪いの言葉を吐きました。そして、不安で不安でどうしていいか分からなくなりました。はじめは、結婚式などへは行きたくはありませんでしたが、どうしても若い王妃を見たくて、いても立ってもいられなくなりました。入っていくと、若い王妃が白雪姫であることが分かりました。それで、恐れおののいて、そこに立ち尽くし身動きが取れなくなりました。

解説:締めくくりは、女王の視点で終わる

刑罰の直前、初版以降はどの版も女王の不安が描かれます。最後は、けっこう意外ですが、女王の視点で物語を終えることになります。

37:女王への刑罰 《終わり》

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初稿(再掲載)
結婚式のとき、王妃は真っ赤に焼かれた鉄の上履きをはいて、死ぬまで踊り続けなければなりませんでした。

《終わり》

初版
そこでは、鉄の上履きが火で熱せられて真っ赤になっていました。女王様は、それをはいて踊らされました。ひどくやけどをしましたが、踊りをやめることはできず、死ぬまで踊り続けなければなりませんでした。

《終わり》

第2版
けれども、すでに鉄の上履きが炭火の上に置かれ、それが真っ赤になると、広間に運ばれました。そして、女王様は真っ赤に焼かれた上履きをはかされ踊らされました。女王の足は、ひどくやけどをしましたが、倒れて死ぬまで踊り続けなければなりませんでした。

《終わり》

第7版
けれども、すでに鉄の上履きは炭火の上に置かれ、火ばしではさんで女王の前に置かれました。そして、女王は真っ赤に焼かれた上履きをはかせられ、死んで床に倒れるまで踊り続けなければなりませんでした。

《終わり》

解説:昔話は残酷です。

初稿は前述しましたが、比較するため再掲載しました。
焼かれた鉄の上履き、死ぬまでのダンスというのは、はじめから最後の版まで変わっていません。昔話に残酷さというのはつきものですが、グリム兄弟は「残酷さ」を積極的にあつかってます。本人たちの中で「残酷さ」はどのような意味を持ってたのか。【グリム童話】「残酷」と批判されたグリム兄弟のリアクション【なぜ昔話は怖い?】にあるので、「残酷さ」のある意味ポジティブな面をグリム兄弟が語っています。なお、女王の最期について、別の記事で書いています【白雪姫】ディズニー&グリム「女王の最後」特集【民話の女王も鉄の上履きで踊るのか?】)。

まとめ:グリム童話『白雪姫』初稿・初版・第2版・第7版のそれぞれの特徴

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グリム童話『白雪姫』は以上になります。
版の違いを比較しながら見てきましたが、それぞれ特徴が見えてきたかと思います。

ざっくり、その特徴をまとめてみますと、

  • 初稿:あっさりしていて、情熱がなく、物語の未完成感が否めません。
  • 初版:同様に未熟さはありますが、荒っぽさの中に、ある種の純真さがあって決定版(第7版)にはない魅力があります。
  • 第2版:ちょうど移行期に位置していて、荒けずりなところと優等生的な顔の両方を持っています。
  • 第7版:プロフェッショナルな完成度ですが、口承文学とは離れてしまって、八方美人的な印象があります。

という感じです。

書籍では、版の違いによる研究は定番になっていて、多くの本が出版されているので、もっと深く知りたい方は下記の参考文献にあたっていただけたらと思います。

それでは、今回は以上です。

 

参考文献
小澤俊夫(1985)『素顔の白雪姫』光村図書.
野口芳子(2016)『グリム童話のメタファー』勁草書房.
フローチャー美和子(2001)『初版以前グリム・メルヘン集』東洋書林.
金田鬼一訳(1979)『完訳 グリム童話集(二)』岩波書店.

【子供への読み聞かせOK】Audible 無料期間におすすめ昔話・童話オーディオブック

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