基礎知識

【象徴的な意味】継母は、なぜ昔話では悪役なのか?【継母の正体】

なぜ継母は、いつも悪役なんだろう?

こんな疑問に答えています。

結論は、子供が母親に対して疑念を抱くこと。

「本当に自分のお母さんなの?」と思う心象イメージにあります。

「お母さん」と呼びたくない時、その子供の母親像は「継母」になっているんですね。

詳しくは、後半の「心の中の継母」から、解説しています。

  • 「継母=悪者」にしたのはグリム兄弟説
  • 白雪姫民話「実の母親」vs「継母」どっちが多い一覧表
  • 誰もが遭遇する心の「継母」

という流れでお伝えします。

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「継母」を悪者にしたのはグリム兄弟説

子供の画像
「継母」を悪者に仕立てたのはグリム兄弟だと主張する人がいます。

グリム童話『白雪姫』の「継母」は、本当は「実の母親」だった!

というのは、けっこう知られていると思います。

『白雪姫』と『ヘンゼルとグレーテル』はもともと「実の母親」だったのですが、読者から寄せられた批判によって継母に変更したと言われています。

「実の母親」→「継母」への変更が適切だったかどうかは、わかりませんが、いずれにせよグリム童話の中では「悪」の役割は「実の母親」ではなく「継母」が背負わされることになりました

この変更に対して、厳しい目を向ける人たちがいます。

「母親」から「継母」に変更したグリム兄弟への批判

昔話研究の界隈では有名なカール・ハインツ・マレは、グリム兄弟犯人説の代表的な論者です。

これらの継母たちが、似たようなからくりで作り上げられた可能性はある。

つまり、無慈悲で、冷酷で、残酷で、意地の悪い母親がいてもらっては困るから、そのような母親は全部、継母にされてしまったのだ。煎じつめれば、(母親という)一つの完ぺきな地位を、中傷するわけにはいかなかったし、まして、声望の高い母親たちの名誉を傷付けるわけにはいかなかったというわけだ

(中略)
このようなまったく不当なすり替えの被害者は、現実の(たいていはたいへん優しい)継母たちだったし、現在でもそうだ。

カール・ハインツ・マレ『子供の発見――グリム・メルヘンの世界』
マレの言っていることは明快ですね。
  • 残酷な母親がいてもらっては困る
  • 母親という完ぺきな地位を中傷するわけにはいかない
  • 声望高い母親の名誉を傷つけるわけにはいかない
だから、グリム兄弟は変更したのだろうという主張ですね。

つまり、グリム兄弟は世間体や社会通念に屈した形で、「継母」に変更してしまったと嘆いています。

マレの批判の真意は「母親にしておくべきだった」という訴えです。

継母=悪は、グリム兄弟が広めた?

手の中に人

確かに、グリム童話は、一説には聖書の次に売れた書物と言われるように、世界中でよく読まれた童話集なので、世界に広めたという意味では、グリム兄弟が「継母」=「悪」のイメージを付けてしまった張本人と言えるかもしれません。

昔から存在する継母話

ですが、グリム兄弟が、はじめて「継母」=「悪」の図式をつくったわけではないですね。

『シンデレラ』に代表されるような継母話は、昔から存在しています。

なので、グリム兄弟は、昔の伝統にならって「継母」に変更したとも考えられるわけです。

『シンデレラ』の最も古い話と言われているのが中国の『葉限』。この『葉限』は日本の南方熊楠が発見したことでも有名ですが、驚きなのは、時代は古く9世紀ということです。

グリム童話が19世紀ですから比較になりませんね。

また、ちなみになんですが、日本の古い継母話はといいますと、『落窪物語』で、これも、10世紀ですから古いですね。

ですから、昔から継母話は存在しています。

グリム兄弟が、世間に屈して白雪姫の母親を継母に変えたかは、タイミングはそうであっても、じっさいは分からないところですね。

白雪姫も、グリム兄弟以前のものに「継母」が存在していた

振り上げる女

ところで、じつは、『白雪姫』の古い類話でも「継母」が存在するようです

『白雪姫』の話型でも「継母」に悪の背負わせたのは、グリム兄弟が初めてではないとマックス・リューティは言っています。しかも、もともと「継母」の方が多いとも言っていますね。

一覧表:『白雪姫』の類話「母親」vs「継母」どっちが多い?

ひとまず、ここで『白雪姫』の類話を見てみましょう。

現在に伝わっている『白雪姫』の類話が「実の母親」なのか「継母」なのか調べてみました。

タイトル迫害者
アイスランドヴィルフィンナ継母
アイルランド木の枝継母
アイルランドアイルランドの輝く星継母
イタリアマリア継母
スイスまま娘継母
スコットランド炎の枝継母
スペイン娘と盗賊継母
スペイン美しい継母継母
チリブランカ・ローサ継母
ドイツリヒルデ継母
ポーランド頭の中の針継母
ロシアオレチュカ継母
アイルランド試練の話姉二人
イタリア美しいアンナ姉二人
イタリアマルゼッタ姉二人
イタリアジーリコッコラ姉二人
オーストリア三人姉妹姉二人
ギリシアミュルシーナ姉二人
スコットランド試練を探しに姉二人
イタリア奴隷娘叔父の妻
アイスランドヴィルフリズ母親
アメリカ孔雀の王母親
イタリア美しいテレジーナと七人の盗賊母親
エストニア盗賊の家の娘母親
スコットランド金の木と銀の木母親
ハンガリー世界一の美女母親
フランスアンジウリーナ母親
フランスかわい子ちゃん母親

まさかの三つ巴ですね。意外に「姉二人」というのが多かったですね。

母親……………8話
継母……………12話
姉二人…………7話
ほか……………1話

「姉二人」の解釈

挿し絵

姉二人といっても、やっていることは「継母」と変わらずヒドいことをするので、ネガティブな母性を表現していますね。

「二人」の部分ですが、象徴的な世界での複数は、「漠然としている」「意識でとらえにくい」という意味になりますね。

二人になって、ぼんやりとしたものとなって、「継母」と同格になるという感じですかね。

実の母親と継母は同じくらい

類話が時代背景が、分からないので何とも言えないのですが、目安にはなるかと思います。

同じくらいという感じでしょうか。

とにかく、どちらも意地の悪い母親像ですね。

伝統的に継母話は存在する

昔から継母話は存在するということは、マレが言うように、昔の人も「母親の地位を傷つけてはならない」という意識があったのかもしれませんね。

「母親」を残酷にしてはならないという意識が、昔だからこそ強くて、話の中身も「継母」に変更を余儀なくされたということ考えられます。

心の中の「継母」

カップル

これまでは、「母親ではないもの」という消去法で「継母」にしていた感がありました。

「どうして、継母になるのか?」という質問に答え切れてはいませんでした。

もっと、心の内側の方に目を向けて、心のイメージとしての「継母」を見ていきます。

いつもの呼び方では呼びたくない時

滝の画像

マックス・リューティが本の中で、精神科医ヴィトゲンシュタインの著書について、言及しているくだりです。ヴィトゲンシュタインが、子供の頃を回想している場面です。

わたしがまだ子供だった頃、わたしの母親がわたしの大好きなおもちゃを取り上げたことがあった。

このとき――ただし、このときだけのことだが――母親はわたしにとって継母となった。
(中略)
継母というものがあることを、わたしはまだ知らなかった。わたしは、ただそう感じただけで、それを言い表すことはできなかった。
わたしはそのとき母親にこう聞いた。
いったい、あなたはわたしの本当のお母さんなの?
母親はこの質問は、もちろん母親には、のみ込めなかった。
なんといっても母親は大人だったから。

 

マックス・リューティ『昔話の本質と解釈』p.283

「本当のお母さんなの?」という気持ちですね。

この時、子供は、母親を憎悪のまなざしで見ているでしょう。これこそ「悪」ですね。

このように思ったことのある人は、多いのではないでしょうか。

この心象イメージが「継母」をつくりだすということですね。

これは、どうして「継母」でなければならないのか?という疑問も解決しています。

「実の母親」の消去法ではなく、「継母」でなければならない理由がこの経験の中にありますね。

「自分の本当の母親ではないのではないか?」

これが、

「本当の母親は、もっと、どこか他にいるのではないか?」

こうなってくると、目の前にいる母親をもはや「母親」とは呼びたくないはずです。

自分の心の内容を含めて、ぴったりくる言葉で表現するとしたら、「母親」ではなく「継母」になってくるのではないでしょうか。

だれもが「継母」に遭遇する

自分の正体を疑う気持ち

小学校をあがる前の子供には「自分は両親の本当の子供ではないのだ。継子か、拾い子なのだ。両親が、ただそれを言わないだけなのだ」

と思い込んでいる子が多いことは、よく知られている。

ここで私たちは、なぜ世の中には継母話があんなに多いのか、というひとつの理由に突き当たる。

継母話は子供ばかりでなく、人間一般の根本感情に一致しているのである。

それは、自分の正体を疑う気持ちである。
マックス・リューティ『昔話の本質と解釈』p.284
継母は、自分の正体を疑う気持ちをもたらすということですね。

拠り所が揺らぐとき「継母」(根本感情)を経験する

ピエロっぽい
心の「継母」は、母なる大地と深い関係があります。

ユング派の多くが、「感情=女性」と解釈をするように、この「根本感情」は「継母」なのでしょう。

この「根本感情」を経験しているのが、子供だけではありません。大人でも、マリア様や観音様といった母親像を宗教的な拠り所としています。大人といえども、精神的な母親像に頼っているのは確かです。

今まで頼っていた母親像に疑いを持つということは、自分の心の拠り所に疑いを持つことになります。

「継母が迫害する」という描写の意味

お城

この感情的な疑惑のようなものが、昔話では継母からの「迫害」となっているのは意味のあることでしょう。

自分が拠り所を失うことは「迫害」のようなものかもしれません。

そして、大事なことは、たいていの主人公は、その困難を克服していくということです。

成長させる「継母」

挿し絵

ポジティブに見れば、「継母」の出現はその人の変革の時期に来ていると見ることもできますね。

子供の成長、人間の成長にともなう変化が訪れることで、「もう頼ってはいられない母親像」に別れを告げる合図として「継母」が出現するのでしょう。

変わるべきなのに変わっていない状況にあるならば、心になんらかのメッセージが届いても不思議ではありません。

継母という困難を乗り越えて、もう一度高度な拠り所を創り上げることができれば、「継母」は主人公の成長に力を貸したことになります。

たいてい、継母話の主人公はハッピーエンドになりますし、最後に「継母」が死ぬことになるのも、継母の正体である根本感情からの卒業を意味するのでしょう。

昔話の継母は、学ぶことは多いですね。

グリム童話「継母が登場する12話」一覧表

KHMタイトル
11兄と妹
13森の中の三人の小人
15ヘンゼルとグレーテル
21灰かぶり(シンデレラ)
24ホレおばさん
47ねずの木の話
49六羽の白鳥
53白雪姫
56恋人ローランド
135白い花嫁と黒い花嫁
141小羊と小魚
186本当の花嫁

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グリム童話全集オーディオブックのジャケット写真

本もいいですが、昔話はもともと口伝えです。

黙読するというよりは、耳で聞くように出来ているので、この機会にプロのナレーターさんで昔話を聴いてみましょう。

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