この記事は、民話の『白雪姫』にしぼった記事です。
狩人好きな僕TanoQが、
「白雪姫の民話でも、狩人役って、やっぱり狩人なのかなあ?」
と疑問に思ったので、調べて、一覧表にしてみました。
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【一覧表】民話『白雪姫』の狩人
タイトル/主人公 | 殺害請負人(狩人) |
---|---|
まま娘 | 狩人 |
白雪姫(異本) | 狩人2人 |
娘と盗賊 | 雇った男性2人 |
美しいテレジーナと七人の盗賊 | 召使い |
魔法の靴下 | 家来2人 |
アイルランドの輝く星 | 黒人の召使い2人 |
魔法の鏡 | 侍従 |
オレチュカ | 御者と世話係の女中 |
アンジウリーナ | 山賊たち |
金の木と銀の木 | 王様 |
世界一の美女 | 老魔女 |
王様の小鳥 | 女召使い |
かわい子ちゃん | 手伝い女 |
ジーリコッコラ | なし(閉じ込め) |
美しいアンナ | なし(置き去り) |
ミュルシーナ | なし(置き去り) |
狩人は少ない
話の骨格は似ています。
母親がいて、娘を迫害します。
で、狩人らしき役柄もいるにはいるんですよ。
でも、狩人というのは、いますけど、少ないですね。
ただ、よくよく考えてみると、グリム童話の「白雪姫」の元の原稿には、狩人は出て来ませんね。
グリム童話『白雪姫』の初稿には狩人はいなかった

「白雪姫」の話は、グリム兄弟の兄が民間人から聞き取ってきたのですが、その時の話の中に、狩人はいなかったんです。(>>狩人不在の迫害箇所)
つまり、狩人は、グリム兄弟が初版から新たに付け加えた登場人物ということになります。
そうなってくると、白雪姫の話にとって、とくに狩人というのが重要ではないということですかね。
まあ、とはいえ、狩人役が誰でもいいというわけではないと思うので、そのへんを見ていきます。
民話で見えてくる『白雪姫』狩人の真相

母親役が娘の内臓を要求することや、狩人役が獣の内臓で母親役をあざむくエピソードも、民話の中にもしっかりあって、ディズニーやグリム童話に特有なものではないようです。
一覧表から、気になる点を挙げてみます。
- 狩人役が不在のケースがある
- 女王の部下
- 狩人の役どころは女性でもOK?
- 狩人と「7人の小人」の両方を担うキャラクターもいる
①:狩人役が不在のケースがある
これは、表にも書いたのですが、迫害の方法が違うということですね。
女王役が、娘の内臓を狩人役に要求しないケースになります。
この場合の迫害は、森へ置き去り、井戸へ突き落とし、部屋に監禁、または、部屋に逃げ込むなどになってきます。
狩人がいないということで、重要なことは、女王への裏切りがないということですね。
②:女王の部下

一覧表を見渡すと、女王の支配下に置かれた立場の職業という感じです。
召使いとか家来が多い印象です。
この人たちが、主人公(白雪姫)をどん底から救うことになるようですね。
「母親に従う男性たち」といった感じに見えるのですが…。
権力のない人たちが、とりあえずは白雪姫を逃がすことになります。
やっぱり「とりあえず」なんですよ。
これが、力のない男(召使い)とイコールなのではないでしょうか。
白雪姫の内なる異性が育っていく?

心理的な見方で見ると『白雪姫』の物語として流れとして、
小人にしても、狩人にしても、まだ母親のスカートに隠れた男性って感じがするんですよね。
『白雪姫』は男性の性質が希薄
※ちなみに、一覧表の中に「王様」になっている話がありますね。
この王様は、王妃の尻に敷かれている感じで、『ヘンゼルとグレーテル』のような弱い父親像として描かれています。
ですから、父性に乏しい父親像ですね。
『白雪姫』の類話は、やっぱり男性が弱いか、不在によって、問題が起こった話のような気がします。
逆に言えば、男性的な性質が育っていく話とも言えますが。
③:狩人の役どころは女性でもOK?

女性もいますね。
昔話に描かれる女性は、実在の女性とは違います。
描かれているのは、純度の高い女性になります。
男性にも存在する女性的な性質のことですね。
女性は、内臓を取り出すような仕事はしない
狩人の役どころが、女性になっている話は、内臓をあつかう話は一つもありませんでした。
女性の仕事ではないのでしょう。
獣から内臓を取り出す「腑分け」という仕事は、民俗学的にも騎士の誇り高い仕事で男性の仕事だったようです。
このような歴史の記憶が関わっているかどうかは定かではありませんが、内臓を取り出すような仕事を昔話の女性の仕事ではないでしょう。
ですから、迫害方法は「突き落とし」「置き去り」などになっています。
狩人役が女性の場合、母親への裏切りがない
狩人役に女性が就くと、どうも母親の片腕的存在になってしまうようです。
母親側に付いてしまって、主人公(白雪姫)に対して、本心からいじめてやろうという役柄になっています。
たぶん、同性ですと、母親像に対抗できないということですね。
もちろん、裏切りもありません。
昔話の世界ですと、対抗するのは、どうしても男性という表現になるのだと思います。
④:狩人と「7人の小人」の両方を担うキャラクターもいる
また、狩人のシーンの次の場面に登場する「小人」の役割も、一手に引き受ける狩人役もいるようです。
どちらも、主人公(白雪姫)を守護する役どころなので、くっついてしまうのでしょう。
この民話には、内臓を要求することはないし、母親役への裏切りもありません。
この図のように、狩人と小人は、地続きといった感じなんでしょう。
まとめ:狩人という職業が重要ではないようです

民話の狩人役は、やっぱり狩人なのかなあ?と疑問に思って見てきたわけですが、結果、狩人とは限らないようです。
狩人役には、女性もいましたね。
女性ですと、どうも母親の仲間になってしまって裏切ることができなくなるというのもありました。
それに、狩人役は、母親の部下的存在、手下的な存在というのが重要で、狩人も、その範疇に入る職業なのでしょう。
その人たちが、主人公(白雪姫)を守り、母親を裏切ることになりますが、この話のすべてを解決するくらいの活躍はできないというのは、ポピュラーな白雪姫と同じところです。
そのへんも、母親より低い立場として表現されているのかもしれませんね。
今回は以上にします。
なお、こちらの狩人記事もあわせて読んでもらえば理解が深まると思います。
【グリム童話】狩人の象徴的な意味【問題を発見する人格】
▶ 【白雪姫民話シリーズ(鏡編)】魔法の鏡 ディズニー&グリムのセリフ【鏡の正体】