『白雪姫』の女王の最期に特化した記事です。

ディズニーとグリム童話の「女王の最期」って違うの?
という疑問にお答えしています。
- ディズニー映画
- グリム童話
- 民話
『白雪姫』の女王の最期を取り上げます。
ポピュラーな『白雪姫』はもちろんのこと、民話の『白雪姫』も比較して、掘り下げていきましょう。
ディズニー&グリム童話『白雪姫』女王の最後全セリフ
違いをざっくり表にすると、こんな感じです。
刑罰 | |
---|---|
ディズニー | 雷に打たれ、崖から落下する |
グリム童話 | 真っ赤に焼かれた鉄の上履きを履いて、死ぬまで踊らされる |
ディズニー「女王の最後」全セリフ

©Disney
毒リンゴを食べさせ、白雪姫が倒れると、
女王「これで、私が一番だ!」
と、高笑いをしながら、部屋から出ると、小人たちが動物たちと一緒に必死になって追いかけてきます。
暴風雨の中、女王は急いで崖の突端へと逃げていきますが、小人たちは追い詰めていきます。
女王「行き止まりだ! どうしよう。イマイマしいやつらだ!」
女王は、崖の頂上の岩を
女王「さあ、見ていろ! 骨の髄まで粉々にしてやる」
と、棒きれで、小人めがけて岩を落とそうとした時、稲光が走りました。
雷は、崖を砕いて、女王を真っ逆さまに奈落へと落としました。
これが、ディズニー映画の女王の最後です。
雷なので、天罰という感じでしょうか。
2羽のハゲタカ
ちなみに、この一連のシーンでハゲタカらしき鳥が2羽、女王の近くに飛んできます。
この鳥の行動は、異様な雰囲気があります。
ハゲタカやハゲワシは、
- 死を予知できる
- 死肉を食べる
などの説はあるらしいですが、何なのでしょうか…。
死の予言者? 死神?…。
白雪姫観たけど、劇中に出てくるハゲタカはスプラッシュマウンテンの鳥と似てるなあ pic.twitter.com/XNSDjj0gq1
— お前は推しに愛されない (@Nonofuji__) January 9, 2021
女王の最後は雷に打たれていない?

©Disney
こまかいところですが、ディズニー版で、女王は直接、雷に打たれていないみたいですね。
よく見ると、雷が落ちたのは、地面ですね。
大きな岩と、女王との間の地面です。
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グリム童話「女王の最後」全セリフ
グリム童話は、鉄の上履きを履いて、死ぬまで踊り続けるという終わり方です。
女王が例のように魔法の鏡にたずねると、毒リンゴで死んだはずの白雪姫が生きていると分かったところからになります。この部分が、女王の最期の描写ですが、グリム童話『白雪姫』の最後でもあります。
これを聞くと、悪い女は呪いの言葉を吐きました。そして、不安で不安でどうしていいか分からなくなりました。
はじめは、結婚式などへは行きたくはありませんでしたが、どうしても若い王妃を見たくて、いても立ってもいられなくなりました。
入っていくと、若い王妃が白雪姫であることが分かりました。
それで、恐れおののいて、そこに立ち尽くし、身動きが取れなくなりました。
けれども、すでに鉄の上履きは炭火の上に置かれ、火ばしではさんで女王の前に置かれました。
そして、女王は真っ赤に焼かれた上履きをはかせられ、死んで床に倒れるまで踊り続けなければなりませんでした。
白雪姫と王子の結婚式なんですが、グリム童話『白雪姫』の最後のシーンでは、結婚する二人の存在は妙に希薄になっています。
鉄の靴を火箸で挟んだ人の顔も、はっきりと誰かはわからない感じなんです。
最後だけ見れば、女王の刑罰で終わるので、本当に白雪姫と王子のハッピーエンド?って感じになってますね。
民話『白雪姫』の女王の最後は?
ここからは、民話の『白雪姫』を見ていきます。民話の方がへんにイジられていない分、本質に近いかもしれません。民間の『白雪姫』の母親はどんな刑罰を受けるのでしょうか?
【一覧表】民話の女王のどんな最期を遂げるのか?
タイトル/主人公 | 罰を受ける人 | 刑罰 | 執行人 |
---|---|---|---|
オレチュカ | 継母と協力者の魔女 | 荒馬の尻尾に結びつけて引きずりまわす | 父親 |
魔法の鏡 | 継母 | 死刑が決定するが、王女が許しを請い、免れる | 父親 |
美しいテレジーナと七人の盗賊 | 継母 | ※ピッチのシャツを着せられて、広場の真ん中に縛り付けられ、火刑 | 父親 |
まま娘 | 継母 | 小人が殺す | 小人 |
奴隷娘 | 叔父の妻 | 実家に帰らせる | 叔父 |
金の木と銀の木 | 母親 | 娘を殺すための「飲み物」を間違って自分が飲んでしまう | なし |
美しいアンナ | 王子の母親 | 王子が火の中へ投げ込む | 王子 |
ミュルシーナ | 姉二人 | 捕らえられる | 王子 |
かわい子ちゃん | 姉二人と協力者の手伝い女 | 薪の山にのぼって、火あぶり | 王子 |
魔法の靴下 | 母親 | なし | なし |
娘と盗賊 | 継母 | なし | なし |
王さまの小鳥 | 母親 | ※黄疸にかかって、いつまでも治らない | なし |
ジーリコッコラ | 姉二人 | 結婚する妹への嫉妬心が高じて、息を引き取る | なし |
アイルランドの輝く星 | 継母 | 樽の中に入れ、外から長くて尖った鋲を打ち込み、高い山の頂上から落とす | 王子 |
アンジウリーナ | 母親 | なし | なし |
※ピッチは、木材に使われる塗料で、コールタールや松やにからできる黒い粘液のようです。
どうも、アスファルトに近いもののようですね。
※黄疸は、眼球をはじめ、体じゅうが、黄色く変色する病気だそうです。
一覧表でわかること

- 刑罰の種類はさまざま
- 刑罰がない話も多い
- 死刑執行人が不在の話もある
①:刑罰の種類はさまざま
ポピュラーな『白雪姫』の刑罰は見当たりません。
雷に打たれる天罰や、燃えた鉄のサンダルを履かされる刑罰は見られませんね。
全体的に刑罰の種類は、バラバラです。こう見てみると、たぶん、刑罰の内容はとくに重要ではないことが分かります。
意味があるのなら、1つの刑罰の集約されると思います。
おそらく、母親が結末に死ぬこと・不幸に陥ることに重きが置かれているのだと思います。
②:刑罰がない話も多い
最後に刑罰がない話は、母親に触れずに終わっていく感じですね。
結末部分は、主人公が幸せになることが語られて幕を閉じるのですが、さんざん悪行を働いた母親が最後になって出てこないというのは、どこか、腑に落ちない気はするのですが。
民話あるあるの中に、何か尻すぼみで終わっていく感じも、よくあることなんですよね。
③:死刑執行人が不在の話もある
そもそも、死刑執行人は、有名どころの話に出てきていない存在です。
ディズニーは雷ですし、グリムは燃えた鉄の上履きを持っては来るんですが、顔が見えない感じで、誰が執り仕切っているのか分からないまま終わってしまいます。
民話だとけっこう出てきますね。
この意味は、継母を正しい判断で裁く強い男性像が登場してきたということでしょう。
あるいは、「狩人→小人→王子」と物語を通して、育った男性像かもしれません。
白雪姫「女王の最後」を勝手に解釈

白雪姫の母親からの自立
最後、女王は死んでしまいますが、これは象徴的に見て、白雪姫の心の中の「母親的な部分」が死んだことを意味するのだと思います。
人間は誰でも大人に成長するためには、継母のような「ネガティブな母親像」と出会って「対決」ともいうべき経験をしなければならないようです。(河合隼雄『おはなしの知恵』)
「内なる男性」の成長物語でもある

「狩人→小人→王子」の男性陣は、白雪姫という一人の女性の中に存在する男性的な性質と見ることができます。
すると、「狩人→小人→王子」は、白雪姫の内なる男性の成長過程という解釈ができます。
最終的な男性像の「王子」について、白雪姫の民話では、継母の死刑執行人になっていることも少なくありませんでしたね。
としますと、内なる男性の成長過程は、
という流れがありますね。
これら男性陣が、女王の対抗勢力になっていることは明らかだと思います。
そして、最終的には「内なる継母的なもの」を滅ぼすという話かなと思います。
やはり、『白雪姫』の冒頭の状況は、あまりに男性的なものが希薄すぎました。
逆に言えば、そのために女王という「悪」が厚かましくのさばっていたとも言えますね。
しっかりとした男性的な性質がはじめから存在していたなら、この話の展開はなかったでしょう。
私たちの継母
女王は、わざわざ変装したりもします。
これは、民話も含めて、おおかた変装しますね。
それが、そのまま迫ってくるイメージなわけですが、とくに、子供からは見えにくいのでしょう。
正確にとらえることのむずかしい女王を、はっきりと認識できるようになるのも、男性的な性質が必要でした。
それを、昔話の中で象徴的に表現すると、死刑執行人という模範的な体現者が、刑を執行するということになるのでしょう。
今回は以上です。
▶ 【象徴的な意味】継母は、なぜ昔話では悪役なのか?【継母の正体】
▶ 【白雪姫民話シリーズ(狩人編)】民話の狩人役もやっぱり狩人か?