白雪姫

【白雪姫】魔法の鏡 ディズニー&グリム童話のセリフ【鏡の正体】

魔法の鏡
©Disney

『白雪姫』の「魔法の鏡」の特化記事です。

ディズニー・グリム童話・民話の3つの『白雪姫』について比較しています。

民話では、そもそも「鏡」が出てくるのかも疑問なので、民話の「鏡役」を一覧表にしています。

 

【白雪姫民話シリーズ(狩人編)】民話の狩人役もやっぱり狩人か?

【白雪姫民話シリーズ(刑罰編)】ディズニー&グリム「女王の最後」【民話も鉄の靴で踊るのか】

【白雪姫民話シリーズ(リンゴ編)】民話の女王も毒リンゴで殺したのか?【美を高める道具】

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ディズニー『白雪姫』の魔法の鏡のセリフ

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魔法の鏡が、女王より白雪姫の方が美しいと忠告するシーンです。

魔法の鏡、冒頭のセリフ

女王「鏡に閉じ込められた男よ。宇宙の彼方の暗闇から出ておいで。吹きすさぶ風に乗って速く。さあ、顔を見せるのです」
魔法の鏡「何をお聞きになりたいのですか?」
女王「魔法の鏡よ、この世で一番美しい女性は誰?」
魔法の鏡「確かに女王様は美しい。しかし、若い娘が見えます。ボロを着ていても可憐な美しさ。その娘は女王様以上です」
女王「何を申すか! そして、その名前は?」
魔法の鏡「くちびるは赤いバラ、髪は黒々と輝き、肌は雪のような白さです」

女王「白雪姫!」

ディズニー映画の冒頭は、こんなやりとりですね。

このあとの話の流れは?

  1. 白雪姫が、庭を掃除をしながら「私の願い」を歌う
  2. そこへ、白馬で登場した王子様が、一緒に「私の願い」を歌う
  3. 王子様が、挨拶すると、白雪姫は城の中に逃げ込んでしまう
  4. 女王が、狩人へ白雪姫の殺害を命じる
と進んでいきます。

ちなみに、「私の願い」はこんな曲です。

魔法の鏡の男を演じた声優は、当時のハリウッド俳優モロニー・オルセン

魔法の鏡の声はモロニー・オルセン(1889-1954)Moroni Olsenという俳優で40代で出演しています。

有名な出演作では、ヒッチコックの『汚名』Notorious(1946)というスパイ映画でシークレットサービスの役を演じていて、主演はケーリー・グラントとイングリッド・バーグマンですね。

その他、ちょくちょくハリウッド映画に顔を出しているようで、一応、英語版のWikipediaに名前はあるのですが、そこまで、著名な俳優というわけではないようです。

グリム童話『白雪姫』魔法の鏡のセリフ

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まずは、女王が、はじめて魔法の鏡にたずねる場面です。
王妃は、不思議な鏡をもっていました。鏡の前に立ってのぞきこみました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国中で、一番美しいのは誰?」
と、鏡にたずねました。
「女王様、あなたがこの国で一番美しい」
すると、王妃は満足しました。なぜなら、この鏡は真実しか言わないことを知っていたからです。

そして、白雪姫が7歳を迎えると、再びたずねます。

王妃がまた鏡の前の立ってたずねました。
「鏡よ、壁の鏡。
この国で一番美しいのは誰?」
すると、鏡は答えました。
「女王様、ここではあなたが一番美しい。
けれども、白雪姫はあなたより千倍も美しい」

これが、一番はじめと2回目の魔法の鏡のシーンですね。

初版から最後の第7版まで、女王が魔法の鏡に問いかける回数を数えると、全部で7回になります。

そのなかで、美しさの勝敗は、女王の2勝5敗ですね。

一番はじめに勝利して、再度、女王は勝利することになるのですが、どこか、お分かりですよね。

女王が鏡に問いかける状況

  1. 美しさで誰にも負けたことがない時
  2. 白雪姫が7歳になった時
  3. 白雪姫が小人の家に滞在することが決まった後
  4. ひもで殺害し、小人による蘇生の後
  5. くしで殺害し、小人による蘇生の後
  6. リンゴで殺害した直後
  7. ガラスの棺から生き返り、王子からプロポーズを受けた後

そうですね。

最初の時と、「白雪姫に毒リンゴを食べさせたあと」になります。

敗北した時の白雪姫といえば、小さい赤ちゃんの時と、毒リンゴを食べて死んで眠っている時ですね。

そういう時に継母は勝つことになります。

やはり、ここでも鏡に問いかけるのが7回ですから、この話は「7」にこだわっているのが分かりますね。

ただ、鏡にたずねる回数が「7回」というのは初版以降のことなので、その前の初稿の段階、まだグリム兄弟が原稿に手を加えていない段階ではどうなっていたのかというと、女王が魔法の鏡に語りかける回数は、冒頭の1回だけなんです。

「鏡よ、壁の鏡。
この天使の国中で、一番美しいのは誰?」
と、たずねると鏡はこう答えました。
「女王様は、一番美しい。
けれども白雪姫は十万倍も美しい」

これが、初稿での唯一の鏡の登場シーンなります。

【一覧表】民話の『白雪姫』もやっぱり鏡なの?

タイトル/主人公鏡の役どころ
アイルランドアイルランドの輝く星池の中の茶色の鱒(マス)
イタリア美しいアンナなし
イタリア美しいテレジーナと7人の盗賊なし
イタリアジーリコッコラ
イタリア奴隷娘なし
ギリシアミュルシーナ夕日
スイスまま娘なし
スコットランド金の木と銀の木泉の鱒(マス)
スペイン娘と盗賊
ドイツリヒルデ
ドイツ白雪姫(異本)なし
ハンガリー世界一の美女
フランスアンジウリーナなし
フランスかわい子ちゃん手伝い女、仙女
フランス魔法の靴下通りすがりの兵士たち
ロシアオレチュカ
ロシア魔法の鏡

ざっと見ますと、やっぱり鏡は多いです。

でも、何もないというのも多いですね😮。

魔法の鏡が出てこないバージョンも多い

一覧表の中では、鏡が出てこない類話も多いですね。

鏡がないのは、大抵は母娘の「美しさ比べ」がない話になっています。

美しさを比べないので、聞く鏡の必要はなくなります。

ですが、その時の怒りが発端となって、狩人を派遣したりするので、鏡の判断は、大事な怒りや嫉妬を生じさせます。

娘に対する怒りがなければ、話にならないので、民話にもあるのですが、鏡が出てこないバージョンは、理由なく怒りますね。

これ、けっこうあります。「えっ、なんで怒ってるの?」と思うくらいに何の理由もないんです。

それと、魚の鱒ですね。

イギリスの「白雪姫」の民話では、鱒や鮭が、鏡のかわりになっているというのが一般的だそうです。(1)

魚なので、鏡とは似ても似つかないものですが、昔話の中でも、鱒が現れるのは泉や池とセットなので、その背景も全部ふくめると、水鏡っぽくなるんじゃないかと…。

魔法の鏡の正体はだれ?

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本命の解釈は、心の中の女王?

ふつう、魔法の鏡の正体を考えれば女王本人でしょう。鏡に映し出されているのは女王の姿ですからね(ディズニーは少し違いますが)。

女王は、本当は美しくないことを自覚していながら、その現実を認めたくないだけだとしたら、魔法の鏡は女王の本心ということになります。

つまり、女王の中で、人格が二つに裂かれた状態。

ひとつは、虚栄心そのものと化した女王と、もうひとつは鏡が真実を担っているという解釈ですね。

『白雪姫』の中でも、鏡のシーンは、誰も相入れない女王と鏡との特殊な異空間という感じもしますし、女王が自身の内界に向かい合っているスピリチュアルな時間という見方もできそうです。

とすれば、やはり鏡の正体は、女王本人だと思われます。

ですが、エラい人が書いた白雪姫の解釈本を読んでいると、けっこういろんな見方があるようで…。

「魔法の鏡」の正体は白雪姫の父親説?

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ディズニー映画の「魔法の鏡」が男性という話をしましたが、魔法の鏡は父親?という説があります。

(前略)
鏡の声の主は、じつは父親なのだ。その家長の下す判定が、お妃の、そしてすべての女の自己評価を決定しているのだ」と。

肉体をもたない鏡の中の声が、実は邪悪なお妃の夫の声であるとすると、白雪姫と母親との葛藤は、心理学的な言い方をすれば、不在の夫・父親の愛の賞賛を得ようとする競争心が動機づけとなっているのだと合点がいく。

マリア・タタール『グリム童話 その隠されたメッセージ』

この説ならば、母親の嫉妬もわかりやすいものになりますね。

母と娘が父親の注意を引きたくて、争っていることになりますから、父親の判定で嫉妬するのは当然のことになります。

事実、グリム童話の『白雪姫』のもとになった話では、ガラスの棺をもらい受けるのは、王子様ではなく、白雪姫の父親という設定になっています。>>父親が迎えにくる部分

この後、すぐに王子様と結婚することにはなるのですが、どこか、とってつけた感じがあるんですよね。

この説、なくはないのかもしれませんね。

「魔法の鏡」の正体は、まさかの白雪姫!?説

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ベッテルハイムは、解釈本の中では最も有名な本を書いた心理学者なんですが、グリム童話の『白雪姫』について「魔法の鏡の正体は、白雪姫説」を展開しています。

以下、その説を参考に解説していきます。

魔法の鏡の言葉は、母親の内心の声というよりは、娘のそれに近い

ブルーノ・ベッテルハイム(1978)『昔話の魔力』(波多野完治・乾侑美子訳) 創元社.p.252

自分の母親が一番美しい

幼い少女にとって、自分の母親というのは絶対的な存在ですね。

他の女性と比較することもできないので、自分の母親が一番美しいと思っています。

グリム童話の白雪姫の話でも、一番はじめの判定で、魔法の鏡が「美しい女性」に指名するのは、白雪姫ではなく母親の方なんです。

これは、娘は生まれてから、ずっと「お母さんが美しい」と見ているわけです。つまり、はじめの判定は幼い女の子だった白雪姫の言葉ということになります。

少女の成長過程に見られる虚栄心

ですが、ある程度成長すると、その時がやってきます。少女は、母親よりも自分の方が美しいと思いはじめます。
「白雪姫は、女王様の千倍美しい」
これも、白雪姫の言葉という解釈ですから、白雪姫は、自分が美しいと自画自賛しているわけです。

この「千倍美しい」という過剰ともとれる言動、必要以上に誇張して、自分の優れた点を誇り高ぶる感じは、成長過程の少女によく見られる特徴だといいます。

つまり、グリム童話の魔法の鏡が、美しい女性の判定を女王→白雪姫に鞍替えした理由は、白雪姫の成長が背景にあるということですね。

白雪姫の自己愛からはじまる物語?

ですが、もちろん、これですべてが解決するわけではありません。というか、これが引き金になって物語がスタートすることになるのですが、、、、。

その後は、ご存じのように、前途多難な物語となります。

そのような成長過程にある子供が、母親よりずっと優れた存在になりたいという願望を持つとどうなるか。これが、あとに続く物語の重要なテーマになってきます。

母親よりも優れていると思いはじめると、どうなるのか? 母親からの報復を怖れることにもなるといいます。

現実的な生活力は親の方が力を持っているし、実際は親の庇護を受けているので、子供は今ある生活を根こそぎ掠奪される恐れを感じることになります。

この恐れの感情などは、白雪姫が狩人から逃げて、森の中ひとりで小人の家にたどり着くまでのイメージに合致するように思います。

このように見ると、魔法の鏡の正体が白雪姫というのも、それほど見当外れの視点でもないようですね。

まとめ:鏡とのいい関係をつくりましょう!

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様々さまざまな魔法の鏡のセリフ、鏡の正体について見てきました。少しでも、鏡への理解が深まったかと思います。

鏡には、私たちもけっこう振り回されますね。

鏡に向かい合いたくないときや、また逆に自分イケてる!と思うときなど、やはりありますね。

反省の道具になることもあれば、虚栄やうぬぼれの道具になったりもします。

時には、対応不可能な真実を告げられて、まさに女王のように錯乱することもあります。

それは、グリム童話の本文にもあるように、

この鏡は、真実しか言わないことを知っていたからです

ということを私たちも身をもって知っているからでしょう。

やっぱり、どこかで鏡が忠告してくることに、従わなければならないことを知っているのです。

鏡に振り回されたくはないのですが、この鏡に左右される問題の解決法は、おそらく白雪姫の物語の中あるのではないでしょうか。

女王の動きは参考になると思いますよ😄。

今回は以上です。
 

【白雪姫民話シリーズ(狩人編)】民話の狩人役もやっぱり狩人か?

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【白雪姫民話シリーズ(リンゴ編)】民話の女王も毒リンゴで殺したのか?【美を高める道具】

参考文献
(1)岩瀬ひさみ(2007)『昔話-研究と資料-25号 昔話と呪物・呪宝』(日本昔話学会編)三弥井書店.
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